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「天恵」 ~零の鍵の世界~  作者: ゆうわ
第十二章 世界の終わり。
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第一話 大団円 1



 クウに自身のイドを、守護者の鍵を奪われるその瞬間を目撃したラスは、一瞬、虚ろの双眸を見開き、何かを発しようと骨となった顎を開いたが、声にならず――そのまま、絶命した。その瞬間を境にピクリとも動かず、ラスの魂気マイトは消失した。クウはラスが零鍵世界から消えたのを感じた。


 「やっ……た。……やり遂げたんだ。僕は、ラスを倒したんだ。」


 続けて、うああああっと言葉にならない叫びを上げて、クウは歓喜の感情を爆発させる。同時にラスも爆発した。巨大な閃光が周囲を覆い、空振が走り、大地が抉られた。意識のあったクウは辛うじて魂気マイトで衝撃を防ごうとしたが、受け止め切れるものではなかった。クウは体中に裂傷を負った。でもその激痛の中でも、クウは微笑む。


 (やった。やり遂げたよ。みんな。僕の考えは正しかったんだ。)


 爆発に吹き飛ばされたクウは大障壁を取り囲むように存在する森の樹木に打ち付けられ、大地に落ちて転がった。ラスの最後の大爆発で重傷を負ったクウだが、それでも気力を振り絞って、立ち上がった。彼にはまだすべきことがある。ロイとハクを連れて帰らなくてはならない。仮にクウがこれから何処にもたどり着けないとしても、戦友で幼なじみの二人をあんな何もない大障壁の上に置いてきぼりにはできない。彼等の命を救うことは出来ないかも知れないが、少なくとも地上に連れ帰り、見送ってあげなくてはならない。クウは大障壁の真下まで歩き、その壮大な障壁を見上げた。消えかかる夕日に照らされて大障壁は茜に染まっていた。その遙か上方に拡がる大空は深い紺碧に沈んでいた。クウは泣いた。三人で肩を組んで歩いたあの頃を思い出して泣いた。自分のわがままでこんな世界の果てまで幼なじみを連れ出して、殺してしまったことに泣いた。ハクもロイも水紋も全て無くなったことに泣いた。心がとても寂しかった。でも、世界はとても美しかった。陽が沈むにつれて大障壁の上部を覆う封印は緑の光を放ち、周囲を明るく照らし、闇を退けた。僅かばかり僅かばかり励まされたクウは、涙を拭い大障壁を登ろうとして無限に伸びる壁の最下部に手をかけた。


 (クウ。)


 ハクの声が聞こえた気がした。


 (クウ。)


 ロイの声が聞こえた気がした。


 「ハク、ロイ……。」


 クウは寂しかった。また涙が溢れて、拭う。クウは大声で泣きたいのを必死に堪えた。息を殺して堪えた。それでも辛くて痛くて寂しくてかわいそうで。クウは我慢できずに彼等の名を叫んだ。世界の外殻にまで届くような大きな声だった。慟哭だった。


 「ハーーーーーーーーーーーーーク!!ローーーーーーーーーーイ!」


 叫んだクウはそのまま大声で泣いた。だが、しかし……そして、その魂の叫びは届く。


 「クーーーーーーーーウ!」


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