第四十六話 世界の終わり 34
オーロウを抜けたクウは、大障壁から落下していく途中だった。ラスもクウも無防備にだた、落下していた。クウはオーロウの中で必死に伸ばした右手を見つめた。握られた掌を開く。そこにはラスのイドが――ない。クウは自分の胸を見る。イドが存在した場所は深く抉られて血が溢れ出していた。絶望と供にクウは大障壁下の大地に叩き付けられた。碌な受け身も取れず、体中あちこちの骨が砕けた。
「うっ……っああ。」
クウは呻いた。改めて自分の胸を確認する。クウのイドは失われては居なかったが深く傷つき、今にもその役割を終えようとしていた。
「駄目……か。」
クウがそのまま目を閉じようとした時、ラスの悲鳴が響いた。それは、世界を割るような跫音だった。クウは声のする方に首を回す。ラスは不定形の身体を震わせ伸縮膨張を繰り返して血を吹き出していた。クウとラスの中間地点には黒い鍵が落ちていた。ラスのイドだ。クウは奪うことが出来なかったが、イドをラスの体内から抜き出すことに成功したのだ。
おおおおおおおお。あああああああああああああああああーーーーーーー!!!!
ラスは叫びながら黒い身体をのたうち回らせ、緑の光を零しながら、鮮血を吹き出していた。震えながら振り返り、鍵に向けて手を伸ばす。身体を引き摺り鍵を取り戻そうと大障壁下の荒れ地を這い回った。クウもそれを阻止しようと鍵に向かい歩く。一歩一歩に気絶しそうな痛みがあり、血を吐く。再びクウも倒れ、起き上がれずに身体を引き摺る。彼等はそのまま立ち上がることも出来ず身体を引き摺って鍵に向かう。それは、絶望的に醜く苦痛に満ちた光景だったが、彼等は止めなかった。顔を上げることさえ出来ないのに、鍵に向かい進む。クウの顔が荒い地面で削られて血と肉が剥がれていく。どちらが先に辿り着くのか全く先が見えない状態で時間だけが過ぎていった。そしてついに、一つの手が鍵にかかった。
それは、クウの手だった。




