第四十二話 世界の終わり 30
クウに自身のイドを、守護者の鍵を奪われるその瞬間を目撃したラスは、一瞬、虚ろの双眸を見開き、何かを発しようと骨となった顎を開いたが、声にならず――そのまま、絶命した。その瞬間を境にピクリとも動かず、ラスの魂気は消失した。クウはラスが零鍵世界から消えたのを感じた。クウが握ったはずのラスの鍵も。だが、いずれにしても決着が訪れた。勝者が確定したのだ。
「やった……やり遂げたんだ。僕は――ラスを倒したんだぁああああっ!」
続けて、うああああっと言葉にならない叫びを上げて、クウは歓喜の感情を爆発させる。同時にラスも爆発した。巨大な閃光が周囲を覆い、空振が走り、大障壁が崩壊した。頭部だけのロイも死にかけているハクも吹き飛んで瓦礫に抉られて食い荒らされた死骸のように引き裂かれた。意識のあったクウは辛うじて魂気で衝撃を防ごうとしたが、受け止めきれなかった。クウの四肢は爆発で引きちぎられていった。死の苦痛の中、ゆっくりと過ぎていく最後の一瞬にクウは渦翁の言葉を聞いた。ロイの頭部は爆散してしまっていたから神意顕現が届いたのは理解しがたい現象だったが、確かに渦翁のその声は聞こえた。
「ありがとう、クウ。さらばだ。すでに私が水紋の最後の一人だ。」




