第三十九話 世界の終わり 27
「おおい。やる気なの?隈取り発現させてるってことは。勝てると思ってんのかねぇ。百歩譲って、俺に勝てたとして、それで世界が救えるって?甘いねぇ。確かに烏頭鬼は俺の術だが、貪食生物や黒嵐は――いやいやいや、無理だって。世界は救えないねぇ。いや、マジで。ああ、おい、やめろ。無駄だ。やめろ、やめろやめろやめろやめろおおおおおぉっ!!!」
余裕の笑みで構えていたラスはクウが本気で命を投げ出してでも自分を倒そうとしていることを確信して、慌てる。身体さえ維持できていないこの状況では闘いは五分五分とラスは判断していた。普通であれば鍵の守護者のイドを抜き取るなどというデタラメは赦されていない。だが、この零鍵世界ではそれを実行出来るモルフが存在している、開闢しかり、このクウしかり、だ。ラスは恐怖した。ここでイドを失ってしまえば、玖鍵世界に帰還するどころか、存在を維持することすら出来ない。ニチリンのような不様な姿となり、身体に張り付いた死と戦い続けなくてはならなくなる。恐らく絶対権者は、失敗したラスを救済しない。ただ単に舞闘に負けることとイドを失うことは全く違う意味があるのだ。ラスは心底恐ろしかった。人生の全てを賭けて積み上げてきた力が全て全て失われるかも知れないのだ。ラスは恐怖した、が、彼もまた真の舞闘者だった。恐怖と対峙して、それを許容して立ち向かう強い魂を持っているのだ。
「ああああっ!っっっくしょう!ああ!やってやる!かかってこいやぁああああっ!」
「うん。言われなくても。全力で行くよ。渦翁さん!聞こえてる?これが最後だよ!駄目かも知れないけど、頑張るよ!」
世界の裏側、遙か彼方の渦翁は精一杯を返す。生きている反応を示さないロイの頭部から、その声は距離を無視して飛び込んでくる。
「ああ!行け!」
ラスはモルフ達の覚悟を感じて、最後に叫ぶ。
「そのイドをよこせええええええええぇっっ!!!」
ラスの絶叫にクウも叫びを重ねる。
「断るよ!ラス!いくよ!」
クウは大きく息を吸って吐き出した。
「オーーーーーーーーーーロウ!!!」




