第三十一話 世界の終わり 19
シロブンチョウモルフのフラウは烏頭鬼の布を発見して直ぐ、ラスと念珠で連絡を取った。水紋を支配する絶好の機会だと判断したのだ。彼女はラスにプランを伝えた。それは、空白に水紋が完全移行した後、闇穴を使い、烏頭鬼を呼び込み、街を支配するという作戦だった。フラウはラスと情報共有しながら、辛抱強くこの機会を待っていた。そしてついにその時が来たのだ。闇穴から烏頭鬼の群が溢れて、テントの内部を埋め尽くしていく。渦翁は必死に考えた。
(恐らく、実行性を考えると残り二回程度だ。この程度の烏頭鬼であれば、殲滅出来るが……行使するか――否。)
渦翁は決断した。舞闘により、烏頭鬼を殲滅する選択をしたのだ。渦翁は大きく金剛錫を振るい、烏頭鬼をなぎ倒していく。彼にしてみれば、造作もないことだった。ミントは直ぐにテレパスで事態を街中の舞闘者に伝えた。フラウは予想外の抵抗に焦ったが、直ぐに烏頭鬼達が予定通りの行動を起こしてくれたので、平静を取り戻した。烏頭鬼達は渦翁と闘いながら大きな闇布を取り出して広げ始めた。それは数メートルの幅を持ち、巨大な烏頭鬼をも容易に呼び込むことが出来た。
「烏頭鬼の兵は倒せても塵輪はどうかしらね?一体なら勝てるかしら?でも二体は?三体ではどうかしら!」
言いながら勝利を確信してフラウは上機嫌に笑ったが直ぐにそれは悲鳴に変わった。
「いやぁぁああああ!なによ!これ!ああああっ!痛い!痛い、痛い、痛い痛いいたいいたいいたいたいいたいいいいいいいいいっ!」
烏頭鬼が新しく広げた闇布からは塵輪は現れなかった。代わりに黒い不定形の何かが現れた。渦翁はそれが何であるか直ぐに思い付かなかったが、ミントは叫んだ。
「貪食生物!!」




