表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「天恵」 ~零の鍵の世界~  作者: ゆうわ
第一章 斜陽。
4/425

第四話 零鍵世界 2



 「喰らえ!山亀!!」


 声に驚き黒丸は振り向く。クウが突き刺した鉄錫の上にハクが鳥のように止まっていた。羊王角渦翁ようおうかくかおうの娘のハクだ。黒丸は舌打ちをする。


 ……どこまで無謀なのだ、この子達は。


 黒丸の嘆きを知らず、ハクは術を放つ。放電掌ザップの術だ。ハクの掌から放たれた電撃は打ち込まれた鉄錫を通して直接、山亀の体内に脳に炸裂した。山亀は悲鳴を上げる事も出来ず意識を失い倒れた。山亀が昏倒する轟音が響く。


 「幼生エイラが山亀を3人で倒すか……。」


 狼のモルフのサカゲは、感嘆して呟いた。セアカ達新入りの教育を兼ねていたとは言え、こっちは樹海の中を十キロメートルも追い回して、傷一つ与えていないと言うのに。


 「クウ!どこじゃ!」


 黒丸が大声でクウを探している。クウは全身を炎で焼かれた。一刻も早く見つけ出し八掌の元に連れて行き、治療を施す必要がある。まだ生きていれば、の話だが。黒丸は大柄で豪快な外観とは裏腹に繊細な感性を持っていた。意識を集中し、クウの気配を探る。山亀の首の辺りで何か生き物の感触があった。黒丸は駆け寄る。クウの右手が見える。山亀の下敷きになっている。黒丸は魂力マイトを高め技を放つ。胸のイドが輝きを放つ。


 真技金剛掌!


 突き出した黒丸の掌から魂力マイトが発せられ、突風が吹き荒れた。大きく重い衝撃が響き、二十メートル以上の大きさがある山亀が裏返った。その下には地面の窪みに嵌まったクウがいた。


 「さすが黒丸さん!すごいや!」


 にっこりと笑う彼は、火傷どころかかすり傷一つ無く、器用に飛び起きて、身体の埃を払っている。


 (……なんじゃ?確かに炎に捕まるのを見たが……何が起こったんじゃ?)


 ケロリとしたクウの元にロイとハクが集まった。今ほどの戦いについて、誰の働きが一番だったのか、やいのやいの言っている。


 (まぁ、お灸は後にするか。)


 最後の子であるこの三人の事が大好きな黒丸は、やはり思い直し全員の頭をげんこつで叩いて回った。他の成体クラ達も山亀の周囲に集まってくる。口々に驚き呟いている。中には、昨年、狩りの仲間に加わったセアカよりよっぽど役に立つと冷やかす者もいた。皆、笑顔だった。まさかこれだけの大物を幼生エイラ達に横取りされるとは思っても見なかったが、兎に角、狩りは無事に終わったのだ。生死の境界は固定したのだ。


 「キリマチに連絡を!山亀をバラして運ばせろ!セアカ!見張りを頼む。街の者が来るまでやれるな?」


 黒丸の号令で、狩りのチームは見張りのセアカ以外、解散となった。後は、街の物資管理部隊が担当するのだ。黒丸はグワイガに耳打ちをし、頷いた彼はどこかへ姿を消した。そうやって、不安そうなセアカを残して、狩猟隊はキリマチへと向かった。独り残されるセアカは複雑な表情で、狩猟隊の方を見つめる。一瞬、狩猟隊の中に何かを見つけたセアカの表情は暗く不穏な表情となった。でもそれはほんの一瞬。直ぐにそれは不安の表情に埋もれていった。セアカは一人で大きな獲物の歩哨となった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ