第二十六話 世界の終わり 15
ラスは、大障壁上空に放り出されたハクを半笑いで見上げている。式神達はよく頑張った。彼等の持てる全てを発揮して支払える何もかもを支払った。ハクの式神達は良く頑張った。
「だが、それでもハクが死ぬことに違いは無いねぇ。」
体中を引き裂かれながら、緑光を放つ古代文字で辛うじてつなぎ止めることで肉体を維持しているラスはそれでも苦痛の表情は無い。今は全く痛みを感じていないかのようだった。ラスは空中で泣き叫んでいるハクを仕留めようとねじ切れた雑巾のような右腕を翳した。ラスは黒羽をハクの白い身体に打ち込んで、彼女を引き裂き穴だらけにするつもりだった。が、質量を有するかのような殺気に身体を揺さぶられて、ラスは振り返る。ロイが眼前に迫っていた。
「ち……。」
漆黒の身体に純白の千鳥格子の隈取りを発現したロイが至近距離で練気を高めていた。白死で止めを刺したいところだったが、白死は全ての力を相殺してしまう極技であるため、大障壁に致命的なダメージを与える可能性がある。現に先ほど、白死が大障壁を掠めただけでその結界の封印は弱まり、朧は活気づいて大障壁が揺らぎ始めた。ロイは繊細に制御して真技を放った。
破裂する鉄拳!
ロイの巨大なこぶしが赤熱して破裂する。ラスは緑光を放つ古代文字を前面に集中させて、破裂する鉄拳を受け止める。ロイは構わずに連撃を開始する。空中にホバリングしながら、ラスの横に回り込み、大障壁の上に着地する。三つの魂核力を最大稼働させて全ての魂気を破裂する鉄拳に乗せて、ラスに叩き込んだ。力を使い切ったロイは、隈取りが消え、膝を着いた。息が荒い。ラスの周囲は破裂する鉄拳の熱と圧力で赤熱して、世界が歪んでいた。ラスの死を確認しようとするロイの目の前には、燃えながらも辛うじて古代文字に護られたラスの怒りに満ちた顔が合った。
「残念だったねぇ……はは。はぁ……もう死ねよ。」
かっ、と開かれたラスの鳥髑髏の口から無数の闇雲の剣が突き出され、ロイの眉間に向けて伸びる。ロイは一切の身動きが取れずに闇雲の剣を、運命を受け入れる。
「残念だ。」
闇雲の剣がロイに深く深く突き刺さった。




