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第二十四話 世界の終わり 13
空がとても美しかった。一言では表せない。暖かで明るい昼の世界が夜の帳に包まれていく、丁度その一瞬を空はしっかりと捉えていた。滑らかでソーダイなグラデーション。
……ああ、綺麗だな。おっきいな。
ハクは心底そう想った。これまでに見たどんな空よりも素晴らしいと想った。彼女は今、零鍵世界最大の都、帝都の上空に居た。ラスに突き飛ばされて。天を仰いでいる。背後にはうねり渦を巻く朧。飛行能力の無い彼女の運命は決まっていた。落下して朧に飲み込まれるだけだ。朧は全てを無に返す。彼女は消滅して二度と転生する事も無い。その彼女を突き飛ばした張本人のラスは死にかけて切れ切れになった借り物の肉体を辛うじて維持している状態ながらも、死に向かい落ちていくハクを見つめてゲラゲラ笑いだ。
だが、ハクには後悔は無かった。
ラスの背後にはロイとクウが迫っていて、その視線は……魂のチャネルは……深く強くハクと結びついてた。彼女は本心を伝える。
後は、お願い。世界を助けて。水紋のみんなを。
彼女は落ちていく。世界の運命が決するその瞬間に向けて。




