第二十一話 世界の終わり 10
「何をしたんだクウ!俺の最大魂気を注ぎ込んだ切り札だったんだぞ?」
ロイはクウの邪魔で白死を外してしまったことで混乱し、動きを止めて背中のクウを前面に回して怒鳴っていた。だが、クウは動じない。
「ロイ!見てよ!ロイの白死が掠めたところの大障壁を!削れてヒビだらけじゃんか!あのまま鴉髑髏に直撃していたら大障壁に大穴が空いてたよ。障壁が崩れたら朧が溢れ出して皆を消し去ってしまうじゃん!」
クウの叫びにロイは我に返る。クウの言うとおり、白死が掠めた場所は抉れてひび割れていた。朧は障壁の弱まりを感じるのだろうか、その大障壁の綻びに向けて体当たりを繰り返していた。障壁が揺れる。
「てか、あれでも充分やばいかも。」
ハクは呟く。彼等が見つめている間にも朧の体当たりで障壁の亀裂は拡がって、自身の欠片を零していた。その横でラスがいつもの馬鹿笑いを繰り返している。
「はははははは。ほら、急げよ?どした?舞闘限界でどうにもならないか?なぁ。大障壁が破られるぞ?そこの坊ちゃんのせいでねぇ。」
鴉髑髏はそう言いながら首を失ったヒトラスの肩の上でもぞもぞと蠢いて遂には首が失われて血が噴き出している首の付け根に癒着してその身体を乗っ取った。
「さてさて、舞闘を続けようか。この身体は安物だけど、充分だねぇ。お前達を相手にする程度であれば。何しろ、ここに居る限り馬鹿みたいな大練術は行使できない。大障壁ごと破壊してしまっては朧が逃げ出してしまう。それじゃ、わざわざ俺に止めを刺しに来た意味がないもんなぁ。ああ、そうだ。ところで霧街のことが気にかからないか?今、結構、大変みたいだぞ。」
ぎいいい、と髑髏は笑った。




