第二十話 世界の終わり 9
ロイは迷うことは無かった。ラスに向かって飛翔しながら、最大魂気で練術を放つ。鴉髑髏の頭部だけとなったラスに対して哀れみも油断も無い。
白死!!
その瞬間、背に乗せたクウがロイの頭部を引き上げて僅かに白死の軌道を上方に逸らした。驚くロイが見たのは狙いが僅かにそれた練術の軌道と鴉髑髏の頭部を拾い上げる……切れ長の瞳を輝かせるヒトの頭部を持つ……ラスだった。そのラスは鴉髑髏を鷲掴みにしたまま、にやけ顔で棒立ちだ。ロイ渾身の白死はラスから僅かに逸れて、大障壁の上部を掠めて抉り、遙か遠方の夜の中に消えていった。ラスは遙か彼方に消えた練術と朧さえも封じ込める大障壁が削られるのをたっぷりと見つめてから鴉髑髏と見つめ合う。
「あのガキ共がそんなにこええのか?」
鴉髑髏を拾い上げたラス……霧街に現れた、完全人化状態のラス……は、頭部だけになってしまった鴉髑髏にそう言った。
「怖く、は、無い。じゃまなだけだねぇ。まぁそう言う意味じゃ、お前も同じだけど。」
それを聞いたヒトラスは馬鹿笑いをする。
「何言ってんのよ?おまえさぁ!俺のことただの影だと思って馬鹿にしてんの?いやいやいやいや。見た目通り手も足も出ないお前が何で俺に偉そうにしてんのよ?ああ?正直、おま……。」
ヒトラスが話し終える間もなく、鴉髑髏はその頭部をばくりとまる囓りにした。大量の血飛沫が夕焼けに燃える世界を更に深い赤に染めた。




