第十三話 世界の終わり 2
クウの金剛錫杖とラスの闇雲の剣が王の間中央で激突して閃光を放った。ラスが叫び、クウに攻撃を仕掛けたことで、クウは確信した。ラスの状態はクウが考えるより遙かに悪いのだ。姿が戻っていないのには理由があるのだ。ラスには余裕がない。事実、出会い頭の八咫闇雲の後は、攻撃らしい攻撃を行っていない。今の攻撃も力任せのただの剣撃だ。
(勝てるかも――。)
クウは一瞬、力を緩める。ラスはそれを好機と見て闇雲の剣に練気を送り込む。クウはその痺れるような圧力に耐えながら一気に身を引いた。体勢を崩して突っ込んでくるラスを身体を回転させて躱し、ラスの背後に金剛錫杖を打ち下ろす。
――いけるか!?
金剛錫杖がラスの背中を捉える瞬間にラスの身体全体が波打って背と腹が入れ替わった。ラスの背後を取ったはずのクウは彼に正面から相対していた。
「甘いねぇ。」
ラスは掌底から闇雲の剣を突き出してクウの渾身の一撃を正面から受けようとした。次瞬、二人の練気の間に挟まれた大気が圧縮され爆発して跫音閃光が炸裂した。二人は王の間の中央から両端まで吹き飛ばされて転げ回る。辛うじて塔からの落下は免れた。
「はぁ。強いね。」
クウは隈取りの凶相に笑みを浮かべた。ラスも笑う。
「ははははは。やるもんだねぇ……でもねぇ。遊んでる暇はないのよ。」
虚ろの眼窩をクウに向けてラスは大きく息を吸った。
「さぁ!最後の舞闘と行こうかねぇ!!」
気を吐くと供にラスはクウに突進し、クウもラスに突進した。お互いに練気に練気を重ねてその力を最大限まで高めて――激突した。再び彼等は、お互いの魂気に弾かれて吹き飛ばされるがラスはクウが無防備になるその一瞬を見逃さなかった。
八咫闇雲!




