第十話 帝都 5
ウーリは流転する闇、神獣の闇泥に身体を覆われて落下していった。身動きの出来ないウーリはそのまま大地に叩き付けられる。ハクは直前に振り落とされて激突を免れた。ハクは皆の状況を確認する。ロイもトト達も無事だ。ウーリは大きなダメージを受けて居るが、激高して咆哮を上げているところを見れば瀕死と言うわけではなさそうだった。ハクは焦る。
「クウ!クウが居ない!」
ハクは叫ぶ。ロイ達も周囲を見渡すがクウの姿は見えない。闇泥に捕まってしまったのだろうか?ハクは焦り、クウの名前を叫んだ。唐突にクウの声が大空に響き渡った。
「勝負だぁああああああっ!!」
ハクは見上げる。今、正にクウが覇宮に飛び込もうとしているところだった。クウは皆より早く行動を起こし、ウーリが引き摺り落とされる前にウーリの背から飛び立ったのだ。クウが覇宮に飛び込むと供に、ラスの八咫闇雲が発動して王の間の半分が吹き飛んだ。ハクは悲鳴を上げるが、ここからではどうしようもない。ロイは状況を理解して素早くジェットで飛び上がった。ロイの飛翔能力があれば尖塔の最上階に到達出来るはずだ。だが、闇泥がロイを包み、ジェットの内部に入り込んでその能力を奪った。ロイは空中で飛翔能力を失って落下する。地面に落ちたロイは闇泥に沈んでいく。ロイは脱出しようとするが、外殻の中に泥が入り込んで身体の自由が効かなかった。
「ここまでか!」
ロイは叫んで外殻をパージした。身体の自由が戻ったロイは素早く、闇泥の不定形の身体を躱して跳躍した。素早くハクの元に下がる。トト達もハクに寄り添っていた。彼女たちの周囲は闇泥がうねり昏い壁を作り、彼女たちを飲み込もうとしていた。ロイは躊躇せずに闘いを挑む。
破裂する鉄拳!
ロイの真技が発動したが、闇の壁に一瞬、穴をあけただけでそれは直ぐに塞がった。流転する不定形の神獣に打撃など意味を成さないのだ。闇泥の壁は一斉にロイ達に襲いかかった。これに飲み込まれてしまっては助かる術はない。ロイもハクも精一杯の跳躍を試みたが、彼らに合わせて闇泥も上方に伸びた為、その跳躍は意味を成さず、彼らは闇泥に飲み込まれた――直後、号砲が響いた。




