第九話 帝都 4
彼らはトト達を呼び戻してウーリに乗って覇宮に向かった。オコジョ達の報告からロイの推測通り……というか、レーダーの感知結果通り……一乃大通りから五キロメートルほど裏道を進むと無傷な街が存在していた。そこには数多くのモルフ達が活気に満ちた生活を送っていた。オコジョ達が話し掛けると彼らは狂った様に返事をして大騒ぎになったという。しかも同じ話を延々と繰り返したとのことだった。非常に興味深い報告ではあったが、それについてはこれ以上、詮索しないことを決めていた。ラスを倒す助けにならないと判断したのだ。ウーリはクウ達を乗せて嵐を呼ぶ風を巻き起こしながら帝都の中心部、覇宮に突き進んだ。途中、街を区切る四つの大門を護る八体の巨像が居たのだが、空を飛ぶウーリに手を出せずに狂気の叫びを上げるだけだった。彼らはただ真っ直ぐ進み――遂に。
「見えたぞ。あの尖塔の最上階だ!ラスが居る!」
ロイが感知して叫ぶ間にもウーリは加速して尖塔に迫る。一瞬で残り百メートルの距離に到達した。クウ達の眼にも巨大な背もたれを備えた掌上玉座に深く腰を下ろすラスの姿が見えた。痩せて弱っているが落ちくぼんだその瞳にはまだ重厚な魂力が残っていた。
「がはははは。しつこいねぇ。」
ラスは笑いながらクウ達を指差した。クウ達は既に残り十メートルの距離に迫っていた。ラスは指を鳴らした。同時にウーリの周囲は闇に包まれる。ウーリは咆哮を上げるが流転する闇は怯まずに彼らを包み地上へと引き摺り落とした。ラスは玉座で満足そうに呟く。
「そいつは玖鍵世界の神獣の闇泥だ。かなり強いんだよねぇ。」




