第四話 凶報 4
「あたしは行きたくない。」
ハクは大きな声で言った。ロイは驚く。クウは笑う。でも何も言わない。だからハクは続けた。
「だって、死ぬかも知れないもん。クウは世界が世界がって言うけど、あたしはクウがいてあたしがいてロイが居てくれればそれで世界は平和なんだもん。死ぬかも知れないラスとの舞闘なんて他の誰かがしてくれたら良いのに。だって、あたし達が出発する時にさ、パパもイソールさんもパーロッサさんも来てくれなかったじゃん。変だよ。あたし達よりパパ達が責任を持たなくちゃいけないのにどうしてクウが死ぬか生きるかの話しをしてるの?」
クウは息を吸って吐いた。何か言う前にハクは続けた。
「クウ。大好き。ずっと前からそうだったし、これからも変わらないと想う。ロイ。大好きだよ。話しがややこしいかも知れないけど、言葉通りに聞いてくれて良いから。ねぇ。あたし達ずっと最後の子って言われてちやほやされてたよね?今は裏街に沢山の子供達が生まれてるよね。あのさ、ひょっとしてさ、あたし達がここで頑張らなくてもさ、裏街のチビ達が助けてくれるんじゃ無いかな。どうかな?」
続けて何か言おうとするハクの前にロイが宣言した。
「行こう。時間がない。正直、怖くてこんなことを言いたくないんだが、全員、いつか死ぬ。それが唯一の結末だ。だから、その可能性を議論してそのパーセンテージで行動を決めるなんてナンセンスだ。結末が変えられないのなら、過程にこそ価値があるのだろう。俺はやる。例え俺が死んで、結局世界が死ぬとしても。俺はやれることをやり続ける。クソマジメと君は馬鹿にするけど、俺は止めない。信念だけを貫きたいんだ。」
「僕は行く。正義や宿命は関係ないよ。僕が選んだ僕の理由のために。だってさ、それが多様性なんだもん。」
ハクは大きく息を吸って吐いた。何度目だろう?こんなにも大きく息をするのは。そして彼女は痛感する。生きると言うことはこんなにも必死なんだ――と。泣きながら彼女は叫ぶ。
「あたしも行くもん!あたしの愛の為に!!」




