表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「天恵」 ~零の鍵の世界~  作者: ゆうわ
第十二章 世界の終わり。
371/425

第一話 凶報 1



 塩乃道ソルードの時とは違い、今回のお礼の終わりは落ち着いたものだった。灰の山脈から離れるに従って、徐々に山祇やまつみの息吹は弱まり、温暖な気候に氷の稜線はどんどん溶かされて低く小さくなっていった。そうして、クウ達の移動速度も減速する。足下の氷が無くなったところでふわっと投げ出されたが、彼ら全員問題なく着地した。


 「おー。ついたぁー。」


 彼らは暖かで豊かな森の中に降り立った。小さな鱗属のクウとすらりと背の高い毛属のハク。大柄な機属ロイと巨大な神獣ウーリ……トト達はウーリの毛皮に埋もれている……なんとも個性溢れる旅の仲間達(パーティー)だった。この零鍵世界の最も素晴らしい部分――類い希なる多様性――が凝縮された風景だった。今の時間は、丁度真上から照らす太陽が彼らや木々の下生えの底まで光を届けていた。森が輝いている。鳥や虫たちの声が心地よかった。平和な森の梢の上からは、数百メートル向こうに存在する巨大な城壁が見えていた。覇国の帝都の城壁だ。ハクが思わず感想を漏らす。


 「厳ついなー。」


 「だな。」

 

 三人は完全食カトを囓りながら進んだ。急げば夕方までに帝都の王城である覇宮に到着出来るはずだ。彼らは内心、早く行かなくてはと行きたくないなを交互に感じていた。何故なら、覇宮には王の間があり、その掌上玉座スローンでラスは待ち構えているからだ。彼らは死ぬかも知れないと思っていた。森は明るく暖かく、美しかった。でも、彼らの心は重く堅く沈む。いよいよ、その時が近づいてきているのだ。ハクがその空気に耐えられず、話し始める。


 「ほんっっと、ピクニック日和!ねぇ。暇だし、しりとりでもしない?」


 ハクの気持ちも知らず、ロイは真面目を言う。遊んでいる場合ではない、と言う理屈だ。


 「いや、駄目だ。」


 「だ!ダムカレー!」


 「レモンパイ!」


 「いや、駄目だって。」


 「て、てんむす!」


 「炭!」


 「み……ミント?」


 「って、結局ロイも参加してるじゃん。」


 クウとハクが大笑いするのをロイは制した。ハクは舌打ちしてクソマジメーと呟いた。彼女は眉間に皺を寄せて“いー”の顔になっている。ロイは気にせずに続ける。


 「聞こえないか?ミントからの交信だ。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ