第二十八話 灰の山脈 2
得意げに加速して飛翔するウーリと怠惰な時間を過ごすモルフ達がクウの不在に気付いたのは、数時間後だった。外はものすごく吹雪いている。
「え!なんで居ないの??」
ハクは大慌てで、ウーリの天蓋の中を掻き回す。天蓋がめちゃくちゃになるだけで、当然、クウは見つからない。トトが天蓋の外に出て、ウーリに状況を説明して彼らは雪山に降りた。真っ白な灰色山脈の麓だ。標高も少し下がり森林限界も下回ったそこは、白銀の樹海だ。皆でウーリの体中をまさぐってクウを探したが当然居ない。トトとウーリは何事か話す。トトの話からクウが居なくなったのは灰色山脈の頂上で自分と話した後だと理解したウーリは責任を感じて、髭をを下げてしまった。ハクもウーリもオコジョ達も自分がクウを探し出すんだと息巻いて右往左往し始めたが、ロイがそれを制した。
「落ち着け。」
ロイはそう言って拳を翳した。手首にキラリと光る物がある。
「あ。」
「そうでした。」
ハクとトトは目を丸くした。
「念珠だ。出発の時に皆に配られた壽物だ。まずはこれでクウに連絡を取ろう。」
ハクもトトもロイに抱きついてその素晴らしいアイデアに同意して大喜びだった。でも一番喜んだのはウーリだった。上半身というか、頭から暫くの部分をそり上げて持ち上げて空に向かい吠えた。それを見て彼らはわははと笑い、早速、念珠での交信を試した。
……クウからの返事が無いと判った時のウーリは溶けて無くなるかと思うほどの落胆ぶりだった。




