第十五話 空 2
「死なないでって、まるであたし達が死にかけるみたいじゃん!」
「そう言う意味だってばさ。」
「だな。」
三人が意味の無い会話を繰り広げる間に塩乃道は霧散して彼らは突如として、現実世界に放り出された。眼前には巨大な灰色の山脈が拡がっていたが、彼らはそこに到達する事無く、荒れ果てた大地に吸い込まれていく。大地までは遙か一千メートルはありそうだ。さすがのクウやハクでもこのまま落ちれば命は無い。ロイもオコジョ達も大空に放り出されていた。
「ウーリ!オコジョを頼む!クウとハクは任せろ!」
ロイは力強く叫んだ。ウーリは理解する。身体が小さく百匹も居るトト達をロイが拾って廻るのは絶望的な作業だった。しかし、巨大な体躯のウーリであれば彼らをその背に拾うことはできる。ウーリは大空をぐるぐる旋回しながらオコジョ達をその背に引っかけていった。
「ありがとうございます!ウーリさん。今、乗せていただいた第六十七号が最後で、全員です。我々はもう、大丈夫です!さぁ!ハクさまを助けに生きましょう!」
トトはウーリの耳の中に頭を突っ込んで叫んだ。ウーリはくすぐったそうに唸り声を上げたが直ぐに彼の主人の事を思い出し、眼下の小さいシミとなったクウ達に向かって急降下を始めた。




