表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「天恵」 ~零の鍵の世界~  作者: ゆうわ
第十一章 最後の旅。
337/425

第十三話 虹目 5



 「ウーリ!上!上に行こうよ!オオクジラさんに挨拶しなきゃ!」


 クウは上機嫌で言ったが、皆が反対した。


 「ええ?なにゆってんのクー!!逃げるに一票!」


 「だな。逃げた方がいい。破格すぎる。俺も一票。」


 「あ……あの、我々も逃げるに百票入れます。」


 「オコジョずるっ!」


 馬鹿なことを言っている内にオオクジラはクウ達の高さまで降りてきた。浮揚するウーリの直ぐ側にオオクジラの身体があった。クウ達は悲鳴を上げそうになるが、互いに互いの口を押さえて何とか悲鳴を堪えた。ここまで体格に差があると敵意の有無は関係なく、身じろぎ一つでクウ達は吹き飛ばされてしまう。大地と区別が付かないほどの大きさがあるこの神獣フィアを刺激することは、死に繋がる可能性があるのだ。クウ達はぴくりとも動かずにただ、そこで静かにしていた。突然。オオクジラの体表に水平にヒビが入り、それが開いた。渦を巻く虹色の瞳が現れる。それだけで十キロメートルある、巨大なその虹目は踊るように泳ぐように揺らぎ無限の色彩でクウ達――最後の冒険者を照らした。ハク達はいよいよ身の危険を感じて身体を強ばらせて湧き上がる悲鳴を必死に堪えていたが。


 「オオクジラさん!初めまして!クウです!眼が綺麗ですね!」


 クウは突然叫んで、彼ら旅の一行を絶望に陥れた。しかし、そのクウの叫びは彼らが予測しなかった方向に話を進めた。オオクジラが返事をしたのだ。


 (ありがとう。旅のモルフ。私は虹目、大鯨、眠る者……様々な名で呼ばれますが、開闢と対をなす存在、劫末ごうまつです。開闢が世界を開き、私は世界を閉じるのです。ありがとう。旅のモルフ。貴方のお陰で氷の寝床から脱することができました。これで、この滅びかけ苦痛に満ちた――原初の世界を終わらせることができます。)


 「え!?あ……い、いやぁ、終わらせるとか、そういうのはちょっと……。」


 クウが慌てて劫末を思い留まらせようと何か言いかけた瞬間に劫末はその頭部を下げ始めた。


 (お礼をさせてください。)


 お礼が何であるかは不明だったが、ハクとロイとオコジョ(百票)は今のうちにこの場を離れようと提案した。しかし、クウは同意せず、その式神であるウーリもそこを動こうとしなかった。遂に彼らが行動を決める前に劫末の口先は海面に到達してその動きを止めた。クウ達の前には劫末の頭部があった。


 ぱくり。


 劫末の漆黒の頭部に巨大な穴が空いた。


 「あ。判った。」


 勘の良いハクが呟くと同時に、その穴からとてつもない魂気マイトが吹き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ