第二話 旅立ち 2
雲龍の速度は恐るべきものだった。旅立ちのその日の内に水紋の国があった東方大陸の北端に達した。そのまま飛び続けようとするウーリを言い聞かせて、彼らは海岸に降りた。ごつごつとした岩だらけのとても寒い海岸だった。
「海水浴って感じじゃ無いね。」
ハクは両手で自分を抱きながら、寒そうに言った。薄いワンピースがひえひえとはためいた。
「そうですね。むしろ、水は嫌いなので好都合です。」
ハクの式神のトトが雲龍のまゆ毛の中からハクに返した。とても暖かそうなトトを見て、ハクはむくれた。
「君はいいよね。あったかそうで!」
言いながらハクはトトをウーリのまゆ毛から引き摺り出して、頭上に掲げて走り出す。式神とモルフは一心同体だから、トトは直ぐにハクが何をしようとしているのかを察した。
「ああ!駄目です!風邪を引いちゃいます。海に入ってはいけま――。」
ハクは持ち前の情熱で極寒の海に飛び込んだ。トトを心配したその他のオコジョが次々とウーリのまゆ毛から飛び出して、トトの後を追う。全員が海に飛び込んで大騒ぎだ。
「ちょーーー!何してんのハク!だめだってばさ!」
強風の中でキャンプの火起こしをしていたクウは、彼女たちに気付いて叫ぶが、楽しそうな雰囲気が気に入ったウーリの尻尾に飛ばされてクウも海に落ちた。ウーリも後を追う。海水が天敵のロイだけはとっくの昔に空中に待避していた。マシンフェイスで呟く。
「……何テンションだ、それ。」




