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第一話 旅立ち 1
「行ったか。」
「ええ、そのようね。」
イソールと渦翁は大きなため息を着いた。水紋の施政者達は無防備にも、海辺までクウ達を見送りに来ていた。ミントに黒丸の金剛錫を預けたのは、渦翁だった。勿論、クウ達は何も知らない。
「彼らの冒険心がうらやましいよ。」
「ええ。なんだか急に老けた気分ね。」
そう言いながらも彼らの顔に笑みが浮かんだ。朝日がぐいぐい登り、老けてしまった子供達の顔を照らした。
「だが、私は想うんだ。私がここに居る意味もあると。」
あははは、とイソールは笑った。それはとても活き活きと瑞々しい笑い声だった。
「そうね。そうよ。私達も負けては居られないわ。そのために私達は残り、彼等に世界をお願いするのだから。」
当たり前のように強い風が吹いて、気嵐を吹き飛ばした。晴れることの無かった気嵐を。多分、何かが始まったのだ。そう、何かを決着させるために――。




