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「天恵」 ~零の鍵の世界~  作者: ゆうわ
第十章 零鍵世界。
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第十九話 この世界 6



 ミントの神意顕現マーフは、神々と交信するだけで無く、モルフとも交信できたし、相手に知られずにその状態や場所を知ることが出来た。ミントは術の感度を高めるために水紋で二番目に清浄な場所……霧宮……で神意顕現マーフを行使した。彼女は一糸纏わぬ姿となり、霧宮最奥の本殿でご神体の前で周囲に香木を焚き続け、三日三晩祈り続けた。彼女が祈祷を終えて、本殿から戻った時には、彼女の美しくなめらかな毛皮は香木の炎で焼けた爛れ、見るも無惨な姿と成り果てていた。ミントは本殿の扉を開けたところで微笑み、そこで待っていたモルフ達に神意顕現マーフの結果を伝えようとして口を開いたところで気絶した。倒れ込むミントをロイが救う。本殿の前室にあたる拝殿で待っていたのは、クウとハクとロイと八掌のムーナだった。ムーナは素早く癒やしを執りおこなう。


 真術現し身(ミガワ)


 左掌でミントの頭部を包み、右掌を反対側に突き出した。右掌からミントそっくりのモルフが現れる。ミントの熱傷は瞬く間にミントのコピーへと移り、それは血を吐いて消滅した。一方で傷が移ったミントは完全に快復した。まあるいタヌキモルフのムーナはうふふと笑って、ミントに告げる。


 「初めましてジュカのお姫さま。会えて光栄です。アタシの術は傷をダミーに移して、オリジナルの傷を無くす術なの。体力は戻らないから注意してね。アタシは魂気マイトがあまり強くないから真術を使うと暫く、他の術が使えないの。本当はオトコモドキのタマモを連れてきて首折り《ネクロク》をかけてあげられれば良かったんだけど……。」


 ちょっと言葉に詰まり、何かを飲み込んでから、ムーナはかわいい垂れ目でウインクした。ミントは体中から痛みが消えたのを感じ、ムーナにお礼を言おうとして……疲労が呼んだ睡魔に飲み込まれてまぶたを閉じた。

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