第十九話 この世界 6
ミントの神意顕現は、神々と交信するだけで無く、モルフとも交信できたし、相手に知られずにその状態や場所を知ることが出来た。ミントは術の感度を高めるために水紋で二番目に清浄な場所……霧宮……で神意顕現を行使した。彼女は一糸纏わぬ姿となり、霧宮最奥の本殿でご神体の前で周囲に香木を焚き続け、三日三晩祈り続けた。彼女が祈祷を終えて、本殿から戻った時には、彼女の美しくなめらかな毛皮は香木の炎で焼けた爛れ、見るも無惨な姿と成り果てていた。ミントは本殿の扉を開けたところで微笑み、そこで待っていたモルフ達に神意顕現の結果を伝えようとして口を開いたところで気絶した。倒れ込むミントをロイが救う。本殿の前室にあたる拝殿で待っていたのは、クウとハクとロイと八掌のムーナだった。ムーナは素早く癒やしを執りおこなう。
真術現し身。
左掌でミントの頭部を包み、右掌を反対側に突き出した。右掌からミントそっくりのモルフが現れる。ミントの熱傷は瞬く間にミントのコピーへと移り、それは血を吐いて消滅した。一方で傷が移ったミントは完全に快復した。まあるいタヌキモルフのムーナはうふふと笑って、ミントに告げる。
「初めましてジュカのお姫さま。会えて光栄です。アタシの術は傷をダミーに移して、オリジナルの傷を無くす術なの。体力は戻らないから注意してね。アタシは魂気があまり強くないから真術を使うと暫く、他の術が使えないの。本当はオトコモドキのタマモを連れてきて首折り《ネクロク》をかけてあげられれば良かったんだけど……。」
ちょっと言葉に詰まり、何かを飲み込んでから、ムーナはかわいい垂れ目でウインクした。ミントは体中から痛みが消えたのを感じ、ムーナにお礼を言おうとして……疲労が呼んだ睡魔に飲み込まれてまぶたを閉じた。




