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第十一話 八咫烏 2
荒野を少し進むと驚くような落差のある崖に遭遇した。枯れ木のように細い身体を屈めて、薄い嘴の付いた仮面で覆われた顔をその崖に突き出す。
「あ。あぁ。なるほどねぇ。」
ラスの嘴の先には、乾いて干上がった荒れ地の中に何キロメートルも堀下がった盆地が存在していた。直径百キロメートル程だろうか。その盆地は周囲の強風が吹き流れる荒れ地とは違い豊な緑が生い茂り、緩やかな大河がうねり伸びていた。その盆地の中央には巨大な温泉の湖があり、それがもたらす熱量がこの盆地を豊にしているのだ。ラスが今居る荒れ地は、とても標高が高く、寒かった。その眼下に暖かな楽園が拡がる。豊かな湖の畔には巨大な城壁を持つ城が聳えていた。その最上階はラスの現在地より高い。
「覇国の帝都か。」
丁度良いねぇ、とラスは呟いた。




