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「天恵」 ~零の鍵の世界~  作者: ゆうわ
第二章 夜の帳。
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第五話 最後の子。




 歓声で舞闘場は揺れた。


 「勝者、ハク!」


 舞闘場の煽動者、アヒルのモルフのシャウトが叫んだ。彼は今日も舌好調だ。全ての観客が舞闘場にただ一人立つハクに向かい声援を送っていた。たった今、二十人の混戦をハクが制したのだ。ハクは月に一度の舞闘会に参加していた。今のバトルロワイアルを制し、次は一対一の決勝戦となる。輪廻転回の義(リーン)を終え、大人クラになって一年が過ぎ、ハクは今、キリマチで一番の人気者になっていた。ハクは六角金剛達の想像を遥かに超えて、舞闘の才能があった。彼女は無敗のままあかつきのチャンピオンになり、こんのリーグに到達し、ここでも無敗のまま王者となった。舞闘の歴史の中でも初めての出来事だった。大歓声の中、彼女は四方にお辞儀をしてから長く美しい腕を上げて観客に向かって振った。歓声は更に大きくなる。背が高くすらりとした彼女はとても舞台映えした。くりくりの大きな瞳とイタズラっぽく口角が上がる大きな口元にも愛嬌がたっぷりだ。ショートボブの前髪を髪留めで上げていて、愛らしいおでこが丸出しだった。相変わらずのワンピース姿で、足元は重厚なブーツ。最後に盛大に観客にキスを投げてから、情熱のオコジョのモルフのハクは舞闘場を降りた。



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