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「天恵」 ~零の鍵の世界~  作者: ゆうわ
第十章 零鍵世界。
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第二話 新たな日々 2



 「てかさ、その尻尾なに?」


 ひとしきり泣いた後、ハクはクウに告げた。すこし前まで包帯だらけだったクウは輪廻転回リーンを経て成体クラとなっていた。


 「なんだろ?判んないや。誰か調べてくれないかな。」


 言いながらクウはクッションの様にまん丸な尻尾をぽんぽんと地面に叩き付けていた。彼は大喝破や黒丸のような蛙モルフになると思われていたが、どうやら違ったようだ。今の彼はどちらかというと、乾いた皮膚を持つとかげのような姿をしていた。真っ黒くりくりおめめがかわいいね、とハクは思った。クウの身体は白い鱗に覆われて所々にオレンジの模様が隈取りの様に混ぜられていた。大きな口は口角が上がっていて、何もしていなくても、笑っているように見える。


 「多分、宮に行けば、あたしでも何モルフかわかると思うんだけど。」


 そか、とクウは短く返した。続けてクウが話そうとしたことを遮るようにハクは話し始める。堰を切ったように止まることなく話し続けた。ハクはクウと離れてからのことをかいつまんで話をした。不気味な実験場の話はしなかったが……霧城地下牢への投獄と脱出と侵入と救出について語った。ラスとの闘いも、雲龍がリツザンに向けて飛び立つところも話した。二人ともゆっくりと寝息を立てる雲龍のふわふわの身体にもたれかかり、荒れた大地に座り込んでいた。ハクは朝日を追い越す早口で喋り、まだ今日は始まる準備を終えていない。ハクは聞いて聞いて、もっともっとと話し続けようとしたが、クウはそれ――単純で幸せな時間――を区切った。


 「ねぇ……皆、どうしているかな。僕もハクとお話したいんだけど、僕たちは行かなくちゃ。」


 当然だった。ハクが話し続けたのもそれを確認するのが怖かったからだ。つまり、ハクはこのふわふわの雲龍が弧を描く僅か数ミリ外は、確認する事さえ恐ろしい状態だと考えているのだ。


 「ねぇ、確認しなきゃ。それがなんであれ。」


 クウはハクに伝えた。いつも通り、真っ直ぐに。ハクも応える。大きく息を吸い込んで吐き出す。ハクは既に泣きそうだった。


 「そうね。行こっか!」


 立ち上がりクウに手を差し出すハクはすらりとして美しかったが、その手は不安で震えていた。クウが立ち上がるとハクは零した。


 「ねぇ、やっぱり見に行くの、ちょっと怖い。」


 ハクはしゃがみ込む。


 「いいよ。ハクはここに居て。雲龍ウーリが護ってくれるよ。僕は少し見てくる。困っている人が居るかも知れないし。」


 ハクは返事が出来ずに居たが、クウはその場を立ち去ろうと彼女の頭をゆっくり撫でた。その時、声が掛かった。



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