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第四話 現状。
そして、一年が過ぎた。
以前と変わらず、霧街のモルフ達は日々を過ごしていた。世界を飲み込む二滅は徐々に霧街に近づいているとの噂が流れていたし、新しい子供は産まれる事は無かった。敵対種の活動は益々盛んになり、六角金剛達達はその対処に追われていた。それでも、霧街は、まだ平和だった。この零の鍵の世界に最後に残された生きている街は、それでもまだ、モルフ達の最後の希望だった。日々の生活が脅かされる事は殆ど無く、モルフ達は漠然とした不安を抱えながらも、笑顔で生活していた。それがバイアスの上に立つ楼閣であったとしても、今は。
そう、それは上辺、表層。実際は少しずつ異常が日常を侵食し始め、終末に向かって進む世界に対して、何も打つ手は無かった。何一つとして根本的な対処が出来ずにモルフ達は、ただただ日々を消耗しているのだ。水紋の国を出て大陸全土の調査に出掛けた最強の戦士である、鹿王角逐鹿は、まだ戻らない。彼が見た世界の現状と彼が推測した世界の未来をキリマチは知る必要がある。でも、まだ、彼は戻らない。




