第二十八話 輪廻転回 4
げらげらげらげら……。
今は面影も無くなった霧街のあった場所でラスは半身を失いながらも狂気の哄笑を轟かせていた。いつの間にか陽は完全に沈んでしまった。闇の中で玖鍵世界の守護者が一人、狂気に包まれていた。
そうだ。誰も認めない。俺は認めないねぇ。真に命と呼べるのは神々の眷属だけだ。モルフは命では無い……。
夜通し轟き続けるかと思われたラスの哄笑は唐突に終わった。ラスの顔から表情が抜けて、彼は大きく深呼吸した。
「さて、今度こそ、帰るか。こんなに手こずるとは思わなかったねぇ。」
巨大な大穴も、石像と化した大渇破も、崩れ去った霧城も、死にかけのモルフ達も何もかもを夜の帳が覆い隠していた。
……風が吹いた。
初めは弱く、そして、徐々に強く。それはまるで死んでしまったモルフ達の魂を連れ去る星神達の吐息のようだとラスは感じていた。それを命と認めていないはずなのに。
「まぁ、どちらでもいい。もう、決着したしねぇ。」
ラスが夜空に呟く間にもその魂を連れ去る風は強く強くなり、いつの間にか死者の悲鳴のような音を立てて吹き荒ぶ、嵐となっていた。ラスの周囲が粉塵に覆われるが、それも嵐に連れ去られ、入れ替わりに濃密な霧が流れ込んで来る。それは、うねり渦を巻いて……まるで、ラスを飲み込もうとするこの世界の意思の様に感じられた。ラスは少しだけ気味悪く感じ、直ぐにここを離れることを決意した。何しろ、物語は決着したのだから。




