第二十二話 神々の眷属《アドミニオン》 13
「では、正式な報告を待つ。いずれ。」
一メートル四方の石で出来た無表情な巨像はそういって、再び、一欠片ずつ上空に去ろうとした。その瞬間に巨像の右脛が唐突に消滅する。倒神の宝剣「曙光」が抉った。巨像は大きく傾ぐ。大空から無数の石が降り注ぎ、霧城は悲鳴に包まれる。だが、当事者達は意に介さない。
「現神王?何でも良いが……最強の魂気を持つ者とみ見た。一舞お願いしたい。」
闇が濃密となり人型を維持していた。すらりとした長身の闇がフードを被ったまま神々《アドミニオン》に挑む。渦翁の術で回復した夏至夜風が、最強の好敵手を認めて、神に挑んだのだ。彼の逆さについた顔に縦に並ぶ瞳が見る者の狂気を誘う。
「何という、魂力だ。これが変異か。実に興味深い。ががががががががが!」
笑いながら体中の石を撒き散らして、現神王は倒れこむ。その背の直下には崩れた霧城があり、今、現神王が倒れこめば、皆、巻き込まれて絶命するだろう。だが、現神王は当然、夏至夜風もそのような些末な事象に興味は無い。彼らが気にしているのは世界の帰趨であり、強者との舞闘だった。それ以上でも以下でもない。遠吠えのような笑い声を発して現神王は背中から倒壊する。




