第十九話 神々の眷属《アドミニオン》 10
そして、神斬の刃が、闇雲の剣を切断した。神斬がラスの魂の本質である頭部に触れ――る、直前に押しつぶされた。天から巨大な正方形の石が落下してきて、神斬ごと一文字を押しつぶした。一文字は押しつぶされたのだ。
一文字は絶命した。
はっきりと視認できる距離で霧街の生き残り達は自分たちの最後の王が絶命するのを確認した。モルフ達は驚き恐怖した。霧街の誰もが叫んだ。一文字を失った悲しみと怒りで。仲間を意味も無く失った絶望で。彼に近しい者達の殆どは死ぬか重傷を負って彼の最後を見届けることは出来なかった。幸か不幸か。その間にも意味不明な正方形の石は次々と落下してくる。一文字だったものが作り出した血のシミを隠すように石は地上に積み重なった。下半身を失い、死の寸前で力なく浮かぶラスの周囲が落下する石で囲まれていく。
「八咫烏。もう良い。この世界は封印する。モルフは殲滅するな。世界を崩壊させるな。」
何のありがたみも無い、軽い淡泊な声が世界に響いた。血まみれで、でも生き残っていたモルフ達は怪訝そうな顔をした。ラスの狼狽が見て取れたからだ。ラスは、低く舌打ちをして、その場に……膝は無いが……跪く仕草をした。その、眼前に一メートル四方に切り出された岩が積み上がっていく。一つ……二つ。落下するその岩の数と頻度は加速していきラスの眼前に、荒れ果てた霧街に瞬く間に積み上がっていく。それは、絶命して頭部を吹き飛ばされた大喝破の亡骸である石象よりも高く積み上がった。やがて、岩は人を模した巨像となった。巨像の体高は五百メートルを越えた。生き残ったモルフは恐怖し、さざめくが、ラスはただただ、おとなしく頭を垂れていた。巨像は問いかける。
「で。調査結果はどうだ?」




