第八話 最強 5
……や……ま?
八咫烏は驚愕する。空に、自身の更に上に山が浮かんでいた。いや、今、ここに現れただけであって浮かんでいるわけではない。そう、直ぐに落ちる。その瞬間に遠方で爆発が起こる。大喝破の最大極術である彼岸永劫の効力によって、この山が突如として消えたその場所で爆発のような嵐が起こっているのだ。そして……山が八咫烏の上に覆い被さるように落ちる。
ああああああぁぁあああぁぁあああああっっ!!
八咫烏は叫んだ。八咫烏は夜空を覆う大きさであっても実体を有していた。雲の様に薄く軽い八咫烏は、山の質量には敵わない。落下しながら押しつぶされて行く。そのまま鋭利な岩だらけにした大地に激突する。翼は引き裂かれ、雄々しく見えたかぎ爪は曲がり折れて、闇のような血が噴き出す。八咫烏は絶叫する。悲鳴を上げ続け……次いで。
落陽。
巨大な山を転移させたことにより行き場を失った大気を一点に集めた玉塊は、自身の圧力で燃え上がり、太陽そのものの姿で落下していく。地上でのたうち、巣から落ちた雛鳥の様に這いずり回っていた八咫烏は、声も出せない。ただ、その圧倒的な炎の塊を見上げていた。落陽は着地して大爆発を起こし、今し方落としたばかりの山毎、霧街からジズ川までの大地を消し去った。直径十キロメートルを越える炎の円柱が、高く高く上がり夜空を焦がしていった。




