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第二話 帝 2
彼岸が生み出したとてつもない圧力が熱となり、霧街を焼き尽くしていた。ラスが吹き飛ばされた先を狙って、大喝破は無数の玉塊を打ち込んだ。大爆発が起こり、大気が揺らいで大地が傾ぐ。その轟音を身体で感じながら、美しい日輪は燃えるように赤く染まる霧街の空を眺めていた。仰向けに倒れて。彼女の豊かな肢体は薄い紙が燃えるようにめらめらと消失していく。瑞々しさの欠片も無い乾いた髑髏になっていく。整った優しい顔も腐敗して骨だけになっていく。
「俺はこの世界の可能性を信じている。皆の可能性を信じている。多様性は許容されるべきで、全ては移ろうのだ。」
誰に告げるでも無かった。大喝破は既にラスに止めを刺すため遙か先に向かった。モルフ達は怯えて霧城に隠れ、この荒れた大地には現れない。それでも日輪は続ける。既にその姿はミイラよりも痩せて、完全な髑髏そのものだった。枯れた声が解放されて風に乗る。
「……暫しの別れだ。俺は戻ってくる。」
その瞬間に、髑髏姿の日輪は実体を維持出来ず、チリとなり風に攫われた。




