表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「天恵」 ~零の鍵の世界~  作者: ゆうわ
第八章 夜の半分。
244/425

第二十三話 夜の半分 23



 真術 ユウライ!!


 サカゲの真術により陽炎の狼の群が現れる。それは踊り波打ち鳥貪ラーガを飲み込む。普段の鳥貪ラーガであれば物の数では無いが、半身を失っている今は、致命的だった。だが、それはサカゲにとっても致命的な術だった。彼は倒れる。最後のマイトの一滴を使い切ったのだ。倒れ込み、意識を失うサカゲを見て、鳥貪ラーガは事態の深刻さを悟る。死を駆けて最後の術を行使したということは、つまり、サカゲはこの揺らめく狼の亡霊達が敵を……自分を……殺すことを確信しているのだ。


 うおおおおおおおおおおおぅっ!!


 鳥貪ラーガは、自身でも始めて聞く狂った雄叫びを、歪んだ嘴から上げた。必死で首切り鎌を振るう。だが、


 (……なるほど。確かにそうだ。この陽炎狼は今の自分より強い――私は死ぬ。)


 鳥貪ラーガは悟った。そして笑う。


 「天晴れ!」


 その瞬間、鳥貪ラーガはサカゲの分身達に首を咬み千切られて落ちる。しかし、その命は終わらない。サカゲの狼たちは鳥貪ラーガの肉を貪りながらも消滅していく。それはサカゲの命の終わりを意味していた。


 (最後の勝負だな、狼!私が食べ尽くされるのが早いか、貴様が死に術が解けるのが早いか!!)


 狂気を呼ぶ激痛の中で声も出せない鳥貪ラーガは叫んでいた。サカゲの狼たちはみるみるその数を減らす。そして、陽炎の狼が最後の一匹になった時、サカゲの側にビャクヤが落ちてきた。しなやかで美しい百戦錬磨の彼女にしては、無様な登場だったが、彼女も限界が来ていたのだ。血を吐く。しかし、彼女もまた最後の力を振り絞って、彼女のゴールに駆け込んだのだ。


 下術 治癒!


 それは僅かばかりの魂気マイトを回復させる、弱い術だった。しかし、その術で最後の一瞬、サカゲの命は延びて、鳥貪ラーガは喰らい尽くされて絶命した。サカゲは僅かばかりその目を開き、彼の耳が僅かばかりの声を捉える。


 「サカゲくん。がんばれ。」


 ビャクヤは顔面から血で汚れた大地に倒れ込み、豚癡モーハは叫んで突進してくる。最後の力を使い切ったビャクヤも微かに意識が戻ったサカゲも自身のリーダーでもある鳥貪ラーガの死体の残滓も気に留めず、何もかもミンチに変えようと、豚癡モーハは大鉈を振り下ろす。巨大な刃が無力な彼らをゾル状の何かに変換しようとしたその瞬間に、彼は大跳躍ガンプから帰還した。


 兎牙ウガチ!!


 コクトは豚癡モーハの頭部を貫いて、それを生肉の塊に変えた。着地してさらさらと語る。


 「ちょっと跳んだだけで、わすれちゃうんだもんな。めっちゃ記憶力が悪くて助かったよ。」


 クロオオウサギモルフのコクトはへらへら呟きながら、辛うじて息をしているサカゲと息をしていないかも知れないビャクヤを抱えて大跳躍ガンプした。その瞬間に霧城東門の戦は終結した。敵味方全ての舞闘者が戦場を離れたのだ。そして、コクトの強力な跳躍の中で意識を失いつつあった、サカゲは微かに想う。


 (……グワイガ。友よ。俺はやったぞ。そっちはどうよ?)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ