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第二十話 夜の半分 20
霧城正大門前は奇妙な空間が形成され始めていた。同士討ちに夢中になっている烏頭鬼や異形の雑兵達は霧街の城壁周辺で互いの命を貪りあっていた。一方で霧城軍の多くは霧城内に撤収しており、今は正にその殿がガリオンの無限幻影に影響を受けない塵輪や三面六臂などの強者と闘いながら最後の数十メートルの後退を試みていた。狂気のオクトーや空蝉もその一団にいて、十爪のグワイガ達と三つ巴の大混戦を行っていた。そして、その両軍の間に生じた空白に巨大な無常大鬼を従えた夏至夜風が抜き身の長剣を構えて、待っていた。周囲には何も居ない。
「さぁ、誰だ?我に舞闘の歓喜を与えてくれるのは。」
夏至夜風は呟き、霧城正大門の大混戦を見つめる。そこから抜け出してくる者こそが、自身に最高の舞闘をもたらしてくれると直感していた。夏至夜風は王の魂気を纏い、微動だにせず挑戦者が現れるのを待った。彼の周囲では致死の風が渦を巻いていた。




