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「天恵」 ~零の鍵の世界~  作者: ゆうわ
第八章 夜の半分。
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第十八話 夜の半分 18



 「貴様等!絶対に許さん!!」


 四牙の一人、シロフクロウモルフのビャクヤは相変わらず、激高していた。だが、今回の怒りは日々のそれとは完全に質が異なっていた。仲間のセイテンの死を悲しみ、彼をあざ笑うかのように放置したその行いに激高していたのだ。半獣化状態で高速飛行する彼女は、渇望タンハーの巨人に向けて、不夜乃嵐ギーガンを打ち込んだ。その闇色の刃の嵐は接触した豚癡モーハの右腕をすりおろして行く。豚癡モーハは痛みを感じる様子も無く、ただ舞闘の歓喜に吠えて、毒の息を吐いた。その紫色の毒煙をひらりと躱したビャクヤは、それでも、肺が焼けるように痛むのを感じた。


 (目で見えるよりもっと広範囲に毒の影響があるんだ……もっと大きく躱さないと!)


 考察するビャクヤの目の前で豚癡モーハの毒の息が接触したありとあらゆる物を腐食していくのを目撃した。ビャクヤは肺の痛みと目の前の腐食に冷や汗を流す。蛇瞑ドーサはビャクヤの心の揺らぎを、動揺を見逃さなかった。蛇瞑ドーサの巨大な尾が高度が落ちていたビャクヤを叩き潰そうと振り下ろされる。一瞬の隙を突かれたビャクヤは反応が遅れて、蛇瞑ドーサの尾を躱すことが出来なかった。


 真技 兎牙ウガチ!!


 四牙の最後の一人、コクトの強力な蹴り技が蛇瞑ドーサの尾に打ち込まれ、巨大な蛇は怒りにのたうち回った。


 「やっと出てこられたよ。あのカラス男に見つかる前にちゃちゃっとやっつけちゃおうよ。」


 コクトはいつも通り軽い口調で愛らしい笑顔を浮かべている。その声と笑顔はビャクヤの怒りを丸めて冷静さを取り戻してくれた。


 「そうね。落とし前付けて貰わないとね。」


 豚の頭部と身体にヒトの手足が突いた巨人と憤怒の形相を浮かべるヒトの上半身を持つ大蛇はゆっくりと体勢を整えた。そして、目の前の有望な舞闘者へと興奮した様子で突進した。


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