第十六話 夜の半分 16
異形の渇望達は、霧街東大門を過ぎてゆっくりと霧街を進んでいた。彼らの周囲では、逃げ遅れていた霧城の舞闘者達が必死で街を駆け抜けて城門内に逃げ込んでいた。霧城の戦いは大きく戦況が変わり始めていた。一度、分散しかけていた軍隊は、異形の出現により混乱した戦況を制御するために再び集結する。霧街正門を両軍の大戦力がにらみ合い、最後の激突に向けた戦圧が高まっていた。一方で、東大門は両軍ともに手薄となったところを渇望が個体力の高さで制圧してしまった。渇望は敗走する舞闘者には興味を示さず、向かってくる者のみを倒しながら霧城に向けて進んだ。楽しみは最後まで残しておく彼ららしく、ゆっくりと霧城に向けて進んだ。ふと、鳥貪の魂の内を狂気が走る。
(……この先、どれほどの舞闘者が挑んでくるだろうか。恐らく決して多くはないだろう。であれば、ひとりひとり、噛みしめて殺さなくては。)
一歩一歩味わうように渇望達は霧城東門に向けて進む。いよいよ東門が見えてきたが、それは大慌てで閉ざされようとしていた。だが、彼らは慌てない。閉門は戦いの終わりでは無く、ただのアクセントだ。門が開いているのであれば、開いている時の戦い方があり、閉じたのであれば、それなりの戦い方がある。鳥貪は呟く。
(……どちらでも良い。必死の舞闘がそこにあるのであれば。)
渇望達の目の前で、モルフ達は転がるように霧城城門の中に逃げ込んでいた。閉門に向けて加速するその様子がモルフ達を慌てさせて右往左往の大混乱を演出した。だがそれさえも渇望は気に留めない。彼らは常に変わらず、純粋に舞闘を求めているだけだった。その渇望がいよいよ霧城東門を仰ぎ見た時、門が閉ざされるその瞬間に門扉の隙間から灰色の突風が吹き抜けて、彼らを煽った。
「いいね。やる気のある奴が残っていたか?」




