230/425
第九話 夜の半分 9
異形達は誰彼構わず襲いかかると供に霧街の外壁を丹念に破壊し始めた。烏頭鬼軍は一斉に霧街になだれ込む。霧城軍は敵を押しとどめるために舞闘力が回復していないことを承知で、休憩不十分な旅団を投入した。戦場は大混戦となり、どの勢力も統率された動きを示していなかった。
「まずいな。これではどれだけも持たない。」
渦翁が呟く。一文字は渦翁に返さずに霧城中段から飛び降りて、戦場に向かった。渦翁は一文字を止めることさえ出来なかった。指揮官が戦場に飛び込むことなど下の下の戦術だ。しかし、世界の明暗を分けるような戦では必ずその瞬間が訪れる。戦術も戦略も無くなる一瞬がある。それを逃す指揮官はその資格すら無い。
「行くならやり遂げろよ……友よ。」




