第二十二話 霧城の決戦 7。
正門で烏頭鬼と激突した黒鬣のバーリと鉄紺のブルーネが率いる霧城軍は開始十分で緒戦の敵のほぼ全てを倒していた。東門でも同様に開戦しており、シロサイモルフ、白角のシムーとヤマラシモルフのランの旅団が烏頭鬼達を蹴散らしていた。最大舞闘力で戦うモルフ達は烏頭鬼よりも強かった。様々な術や技を使いこなし、烏頭鬼を翻弄した。特に塵輪、三面六臂を先に倒す戦術は効果が高く、戦場の天秤は霧城軍に傾いた。だが、彼らが最大舞闘力で戦えるのは十五分だけだ。それ以降はその半分程度の力しか出せない。塵輪を圧倒する舞闘力を持っていたはずの胆月が命を落としたのは、十五分を越えて戦い、烏頭鬼を深追いしたためだった。霧城軍は大きな問題を抱えていた。どれだけ門前で勝利しようと烏頭鬼の野営地までこの悪鬼達を押し返すことは出来ないのだ。モルフ達が半身で戦って勝てるほど、烏頭鬼は弱く無かった。今回もこれまでの戦いと同じだった。モルフ達はかりそめの十五分だけの勝利を手にして……それを手放すのだ。それは永久に繰り返される。
そして、十五分が過ぎた。ブルーネとバーリの旅団は後退し、センザンコウモルフのドゥータとサソリモルフのネスタの旅団と入れ替わる。無論、烏頭鬼達もただ入れ替わりを見ているだけでは無い。こちらも次の旅団がブルーネとバーリの軍を追撃し、これまでに押し込まれた分を押し返した。体中を刃状の鱗に覆われたドゥータ……物騒な体表とは無関係に彼女は小さく可憐だ……はバーリとすれ違う。
「ししし、しっかり休んでください。すぐすぐ直ぐに出番が来ます。」
完全獣化に戻ったバーリは軽く吠えて返した。判っている。ドゥータの軍が烏頭鬼と十五分戦えば我々と交代しなくてはならない。制限時間を越えて舞踏し、舞闘力が半減している時に塵輪に出くわせば、勝目はない。タイミングを間違えば簡単に霧城軍は壊滅する。緒戦を戦った彼らは一旦退き、五分の間は完全に舞闘を止めて舞闘力を回復させなくてはならない。この制限時間さえなければとっくに烏頭鬼を全滅させられただろう……が、それを言っても仕方が無い。これは神が――三神――が決めたルールなのだから。正門の旅団交代に続き、東門でも交代が無事行われ、舞闘の第二幕が切って落とされた。




