第十九話 霧城の決戦 4。
遂にその時は来た。烏頭鬼の破城槌がその準備を終えていよいよ振りかぶったその瞬間、霧城の正門の上で一文字がこの戦始まって以来の……いや、息子に舞闘で敗北して以来の……鬼気迫る笑顔を見せた。彼の体表を漆黒の隈取りが覆う。
極技 真一文!!
その瞬間、一文字の折れた角が光り、天空から極光が落ちる。驕り高ぶった烏頭鬼の破城槌とそれに歩を合わせる軍勢は一文字の真一文に剪断される。キャベツの千切りの様においしくふわっと切り刻まれ破壊され、絶命した。そして霧街が切断される。大地が割れ、街は反転して、灰土と化した。烏頭鬼の絶叫と自軍の歓喜が融合した。続けて、二度、三度。街は崩壊して、霧城だけが残った。烏頭鬼は一瞬で霧街の外まで後退した形となった。
「今日で全てを押し返すぞ。」
そう、一文字は呟き、その後、獣のような絶叫を上げた。霧街の舞闘者達はその地鳴りのような鬨の声に勝利を確信した。彼らは角が折れた一文字を見て、もう真一文は使えなくなったと思い込んでいた。もう、彼の気迫は失われたのだと思い込んでいた。だが違った。彼は息子にその場を譲る事を決めただけだった。もう、自分が前面に出る必要がないと考えていただけだった。彼の苛烈な魂はその1%も損なわれては居なかったのだ。霧街はそれを実感した。歓喜の叫びが鬨の声となる。
「時間だ。」
渦翁は念珠を通して仲間に告げた。念珠は仲間達の息を吸う音だけを伝えしかし、戦端は一気に開かれる。




