表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「天恵」 ~零の鍵の世界~  作者: ゆうわ
第七章 霧城の決戦。
209/425

第十二話 霧街に隠されたモノ 8



 渦翁は躊躇無く、その部屋に飛び降りて、ラスを叩きのめすために魂気マイトを練り上げる。しかしその部屋の異常に気づき、行動を止めた。異臭が部屋を埋め尽くしていた。目の前には烏頭鬼が拘束され吊されていた。体中に様々な端子が差し込まれて、何かの情報を抜き取られていた。恐らくその情報は上の部屋の念鏡に送られているのだろう。烏頭鬼は体中を腐らせて死にかけていた。その横には三面六臂の巨大な頭部が同じように様々な端子を差し込まれた状態で放り出されていた。部屋の壁はモルフの切断された頭部が納められたガラス瓶で埋め尽くされており、それぞれのガラス瓶にも同じようにナニかのコードが差し込まれてそれらは全て階上の念鏡の部屋に収斂していた。


 (やはり、ラスが首切りだったのだ。)


 遅まきながら渦翁は断定した。当たり前だ。ラスは最も怪しい容疑者だ。ファンブル達は内面の対立はあったにしろもう何十年も共生してきた。今更、霧街に戦争を仕掛けるようまねをしてもメリットは無い。わかりきっていたことだ。ただ、霧街にはラスを犯人と断定する根拠が無かった。ラスには動機が無かったし、彼は何度も霧街を救ってきた。行動の整合性がとれないのだ。


 (それにモルフを殺して何の情報が入手できるというのだろうか?……だが、動機は動機、事実は事実ということか。)


 渦翁は全てに決着を付けるために、素早く悲鳴を上げているロイの背後まで踏み込んだ。前方には、高らかに笑うラスの狂った笑顔があった。素早くラスに向けて金剛錫杖を突き出す渦翁は彼らの間にあるそれに気づき、硬直した。


 「ハク。」


 ハクがいた。投獄されている筈のハクがそこに。変わり果てた姿で。天井から鎖で吊されていた。彼女の背中は、腰から頭部にかけて鋭利なナニかで切り裂かれており、脊髄や……ああ……脳髄が露出していた。恐ろしいことにハクは薄眼を開けて、ナニかを呟いていた。その声は聞き取れないが、ハクの幸せそうな表情から、渦翁はまだ幼く何の心配も要らなかったころの思い出話をしているのだと直感した。無数のコードがハクから伸びて、階上に繋がっていた。ロイは絶叫していた。顔を体中を掻きむしり泣きながら叫んでいた。ラスは爆笑している。真っ白いハクは赤に染まっていた。


 「アハハハハハ。傑作だよねぇ。ロイ?狂った?発狂したの?なぁ!魂も感情もないお前等でもそうなるのか?ねぇ!どうなのそれ!」


 続けてひとしきり笑った後、ラスは地面を凍らせるほどに冷たい声で宣言した。


 「まぁ、でも、俺は認めない。日輪がなんと言おうともねぇ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ