第四十一話 称名池5。
大喝破の絶望を受けきれず、クウは洞窟の天井に向かって話し始める。
「僕は生きたい!世界が死んじゃうなら、その日まで生きていたい。だって、みんな生きてるよ?笑ったり泣いたりしてる。ご飯を食べたり、寝たりしている。どうして死ななくちゃいけないの?みんな生きているんだよ!」
だからどうしたとは言わなかった。大喝破は本当に諦めていた。百年前はまだ、何とか出来ると考えていたし、五十年前も各国と供に世界を正しい姿に戻すことを議論していた。でも……十年前はどうだろうか?その時は既にこの零鍵世界には霧街とジュカの二つの都市しか残って居なかった。五年前には世界中を貪り荒らす空の眼と流動する闇が猛威を振るっていた。帝都には魂の抜けたモルフだけが残り、世界は薄い絶望に覆われてしまった。
今は?
もう、最終段階だ。大喝破は再び、称名池を揺るがすため息をついて、クウを諭した。
(ゆっくり死のう。全てには意味がない。ワシらはどこから来て、どこに行くのかも判らん。目的も価値も失われている。もう手遅れじゃ。結局同じゴールじゃ。ワシの寿命もいよいよ尽きるのじゃ。長かった。本当に長かった。もう、終わりじゃ。逆らうな、身を任せるのじゃ。)
再びクウは叫ぶ、リドは飛び立ち、蛙たちは池に身を隠した。クウは理解していた。確信していた。大喝破の助け無しに霧街は生き残れないのだ。めまいを伴う緊張感が身体の中で爆発して通り過ぎていく。
「大喝破さま!聞いてください!霧街は今、精一杯を戦っているのです。みな、命がけで戦っています。闇穴から湧き出す、烏頭鬼達と!空の半分を覆うような巨大な烏と戦っているのです!僕たちを……。」
クウが言い終わる前に洞窟が震え始めた。大喝破の声が響く。今度は本当に、洞窟内に響いた。生き物たちが振り返り硬直して、逃げていった。彼の声は怒気を孕んでいた。
「空の半分を覆う?」




