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「天恵」 ~零の鍵の世界~  作者: ゆうわ
第六章 リツザン。
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第三十七話 称名池1。



 結局の所、クウが使う術とも技とも判断のつかない「オーロウ」とはなんなのだろうか?この時点では誰もその答えを持たない。現象としての「オーロウ」は、すり抜けであるとか透過であるとかの言葉が適切なのだろう。だが、本質は?


 (お前の術はワシにも判らんだ。ワシの“彼岸”に似ておるが、明らかに違う。クウよ。成体クラになれば、全てはっきりとする。それまであの術は多用するな。良いな……。)


 (クウ。それが判らんのだ。そなたの術が安全なのか、そうではないのか。何に影響して、何を生むのか、奪うのか。だから、使うなと言うとる。今は、じゃ。わかるな?……。)


 大喝破の言葉は、すでに空に浮いて意味を成さない。でも、確かにそれは一つの真実だ。誰もクウの「オーロウ」について理解していないのだ。クウは今、分厚い岩戸をすり抜けていた。

 一つ、クウは知っていることがあった。誰にも秘密にしていることがあった。それは、“オーロウを発動している間は世界と繋がっている”ことだった。今も彼は世界と繋がっていた。オーロウで世界の詳細を知ることは出来なかったが、世界の大きな流れや状況を知ることが出来た。


 例えば、今、世界の裏側では意識を持たない無数の魂気マイトが彷徨っていること。例えば、今、北の大地に大きな何かが横たわっていること。例えば、世界の中心には何もないこと。例えば、霧街以外にモルフが集まる場所はもうこの零鍵世界にはないこと。そして、開闢の視線をはっきりと感じていた。こちらを見つめて捉えようとしている。ラスもクウの視線を感じて、こちらの正体を探っている。ラスの中には明確な世界への悪意が渦を巻いていた。……クウは世界を直感し、感じ取っていた。今、このオーロウの瞬間に。


 クウは意識がすり切れていくのを感じた。オーロウを発動させることは自分の意識の中で行えた。だが、一度としてオーロウを自分の意思でやめた事はなかった。オーロウは勝手に終わるのだ。クウの意識がコントロールする事は出来ないのだ。今も分厚い岩戸をすり抜けて行くが……そもそもすり抜けているのかも判らないが……それがいつ終わるのか、理解も直感もなかった。クウはただ、オーロウを発動して、その不思議な流れに身を任せているのだ。

 しかし、クウにはいつもにない感覚があった。通常であればオーロウは一瞬で、その経過を意識することはない。だが、今は違った。とても長く、その一秒毎に魂気マイトがすりきれて、クウは衰弱する。


 ……ああ。何か変だ。僕、死ぬのかも……。


 長い長いオーロウの中でクウの意識はすり切れて希薄になり、そして、やがて……消失した。


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