第四話 春夏秋冬2。
頭だけをテントから突き出して、クウは直ぐに周囲の状況を確認した。平和と言って良いのなら、そうだった。生死がない交ぜになった、いつもの野生が広がっていた。あやかしの狂気は感じられない。ただ、巨大な何かが何かを引きずってクウのテント近くまで来ていたことは間違いなかった。雪で湿る大地にその跡が残っていた。クウは驚く。
(でっか!)
幅三メートルの引きずり後が縦横無尽に付けられていた。クウは一瞬巨大な蛇のような生き物を想像したが、それだと大きすぎるので、亀のような生き物がお腹をこすりつけて移動していたのでは無いかと想像した。それでも巨大な生き物であることには違いない。もし、クウのテント発見されていたら……。
(でも、まあ、もう居ないか。)
クウの大らかさが久しぶりの冒険で花開いた。クウの本質は突き放したような解放だ。恐怖に縛られない彼の感性は自由でだからこそ本質を見抜いたりもする。恐怖は存在しない。確信したクウはテントの外に出る。深く雪が積もっていた。太陽は世界を照らしていたが、ひらひらふわりとまれに雲の欠片が舞い降りて辺りは冷ややかだ。陽光は優しく降り注ぎ、雪の照り返しは鋭い。空は抜けて蒼く拡がる。吐く息も白く、彼の心も純白だった。
(さぁ、いかなくちゃ!世界が待っている。)
クウは生まれ変わったような純白の世界にわくわくしながら、昨日の疲弊したキャンプを畳んだ。全ては再び、巨大な背嚢に仕舞われてクウにのし掛かる。でも、クウは平気だ。彼には目的があった。一乃越、二乃越、三乃越を超えて岩戸をすり抜け称名池に到達するのだ。そこには大喝破さまがいて、全てを説明すれば霧街から異常を払ってくれる筈なのだ。
(もし、途中で失敗したら?遭難したり敵対種に襲われて死んじゃったら?)
不安はある。黒丸も達成の見込みは低いと言った。でも、クウは臆しない。四十キロメートルの道のりにも、途中に待ち受けて居るだろう、空前の敵対種に対しても。クウは今日も歩き続ける。夜になり、再び眠りについたとしても、明日また歩き出す。次の日もその次の日もそう。一日一日は変化がなく、しかし、積み重なって少しずつ全てを変えていく。変わらず美しくあり続けるリツザンの大自然の中をクウは着々と進んだ。
そして――クウは再会した。




