第三十三話 炎の攻防2。
“闇穴”を目前にして水紋の戦士達は烏頭鬼に阻まれていた。ヒハクの様に状況不明のまま不意打ちを食らうような状況は脱しており、雑兵に遅れを取るような戦士達では無かったが、とにかく数が多かった。水紋の戦士達が“闇穴”に集結した為、これまでは分散していた烏頭鬼達も“闇穴”の周囲に集中しだしたのだ。戦士達は烏頭鬼の死体を踏みつけて戦闘を繰り返した。
金剛掌!
黒丸は水鏡で隠れたまま、全力で戦っていた。周囲の烏頭鬼が吹き飛ぶ。烏頭鬼は姿の見えない黒丸に為す術も無く、崩されていく。グワイガは十字烈脚で敵を切り裂き、サカゲがその隙間に突っ込んでいく。圧倒的な舞闘力を持ちながら霧街の舞闘者達は焦っていた。
(全力で戦えるのは後、5分ほどか……。)
霧街の舞闘者達が全力で戦えるのは15分だけだった。それを過ぎれば、半分の舞闘力も出せない。その時、戦況はひっくりかえる。その時、十万の敵兵の中で彼らは何が出来るだろうか。勿論、忍達は無限舞闘があり最大能力で戦い続けることが出来る。それでも九人で駄目だったものが三人で達成できる筈も無い。今、この作戦が失敗に終われば、烏頭鬼達は“闇穴”を守るための対策を取るだろう。出入り口となる外衣を一カ所に集めるだけでも水紋には打つ手が無くなる。増え続ける軍勢と消耗戦を繰り広げるしか無くなるのだ。そこに希望は無い。
「ここが踏ん張りどころじゃ!“闇穴”を目指せ!」
黒丸は叫ぶ。烏頭鬼の死体を踏みつけて戦う。頭上では烏頭鬼が飛び回り、獣化したフエナを取り囲んでいる。フエナが一番延焼力が高い。彼女が“闇穴”に到達出来れば作戦は決着する。だが、飛行できるモルフは彼女だけであり、戦士達の中で一番苛烈な戦いを強いられている。念珠により彼らはコミュニケーションを取っていたが、激しい戦闘を行っていた為、それぞれの詳細を伝えることは出来ずにいた。だから、ポー達が“闇穴”に最接近していることは知っていたが、焼き払える状態となっているのか不明だった。とにかく、時間がなかった。
「ええい、くそ!何じゃこの雑兵どもはきりがないわ!」
苛立つ黒丸は金剛掌を乱発して烏頭鬼を吹き飛ばし、周囲を空白地に帰す。だがそれもすぐに烏頭鬼の群れに埋め尽くされる。しかし、その一瞬が運命を分けた。彼の背後で声があがる。
「黒丸!どこ?出てきて!」
黒丸は全てを理解して、そこに光を見いだした。




