第二十九話 決戦。
霧街のモルフ達は念珠を用いて炎を操るモルフを招集した。一文字が霧街と裏町を代表して、場を仕切った。一文字は広場中央に立ち、周囲を座り込んだモルフ達が取り囲んでいる。
「使用可能な外衣は3つ。大勢で乗り込んでも帰還に支障を来すだけだ。本作戦は十名で実行する。作戦は単純だ。外衣を使い敵陣に乗り込み、闇穴を焼き尽くしたら、同じく外衣を使って帰還する。それだけだ。詳細は先に話したとおりだ。奴らは夜目が聞く。日が沈む前に決着させる。実行は三十分後だ。最終準備を行え。」
短い応答があり、選ばれた十名は立ち上がった。一つの外衣から三名ずつ乗り込み作戦を実行する。烏頭鬼の野営地の状況は先に放り込んだ念鏡が僅かに伝えるのみで詳細は不明だったが、時間が無かった。敵は徐々に増えている。増え続けている。今が限界点だ。ここで“闇穴”を除去する必要があるのだ。三十分後、三つのチームが外衣の前に揃った。四牙のサカゲが率いるチーム狼炎には彼の盟友でもある十爪のグワイガとクロオオウサギモルフのコクト。六角金剛の黒丸が率いるチーム水鏡には、機甲蟲モルフのロイと十爪に属するミグラモルフのフエナ。そして裏町の紫檀パーロッサ率いるチーム黒化には鉄刀木ヒハクと忍のポー。外衣を使用するため、万が一を想定して、裏町の外れで作戦を実行することとした。用意された三つの外衣は地面に刺された二本の鉄柱の間に広げられていた。広げられた外衣はその魔力で脈打ち、闇が渦を巻いていた。外衣の内側には質量のある闇が詰まっていた。ここから先は何かの保証があるわけでは無かった。念鏡が野営地に届いたこと、烏頭鬼がこれを使いこちらにやってくることから、こちらからも野営地に乗り込むことが出来るだろうとの推測しかない。しかも、いつ向こう側からこちらに烏頭鬼が飛び込んでくるかも判らない。これは大きな賭けだった。だが、真っ正面から10万の軍に飛び込み闇穴を焼き払うよりは可能性があった。闇穴を放置して籠城戦を行うよりはマシだった。選ばれた九名に命の保証はない。霧街、裏町の長がそれぞれの責任で仲間を選んだのだ。死の可能性を承知で。全員に念珠が配られた。それぞれが腕や脚に念珠を付けた。
「では、頼む。水紋の国を救ってくれ。」
飾ること無く一文字は告げた。チーム黒化は何も言わず、チーム狼炎は短く応答し、チーム水鏡は黒丸が返す。
「儂等が失敗したら、国を捨てて逃げろ。現状では勝目は無い。耐えて逃げ延びて、時期を待つのじゃ。」
一文字は深く頷いた。そして、彼らは闇がうねる外衣に飛び込んでいった。




