第二十二話 区切り。
忍達は油を撒き、松明をかざして、烏頭鬼の死体に火を放った。やっかいな外衣も不快な遺体も、もうもうと黒煙を上げて消えていく。夕闇が迫る東の街道は立ち上る黒煙の為に、深夜の暗がりに包まれたようだ。その黒煙を背後に黒檀は黒壁の上に、立て膝で座る。手には烏頭鬼の外衣が握られている。どうでも良さそうに問う。
「で?今更なんだ。」
黒化した黒檀が見下ろすのは四牙のサカゲだ。サカゲは半獣化の状態だ。霧街の使いとして黒檀の元に来ていた。
「恐るべき舞闘力でしたね。特に貴方は、裏町の四大極をも超える舞闘力をお持ちのようだ。さて、先の戦いについて話が聞きたい。霧街からは、東大門前で交戦するので、敵を素通りさせるよう依頼があったと思います。それを無視した理由と、黒くなる技、超人的な持久力について説明を聞きたいのです。」
はっ、と黒檀は短くあざ笑った。表情は崩さないが、サカゲは苛りとする。黒檀はサカゲの感情の遷移を無視して返す。
「裏町は霧街に支配されているわけでは無い。単純に捨てられただけだ。命令される筋合いは無い。我々の舞闘力は、黒化と無限舞闘だ。そして、これ以上話すつもりも無い。判ったら帰って、一文字さんに報告しろ。裏町は霧街が知っているそれではなく、舞闘力も霧街より高いとな。」
サカゲの魂力が研ぎ澄まされ、眉間に皺が寄る。今、確かに黒檀は、“一文字さん”と呼んだ……。
「誰だお前は。」
黒檀は一瞬だけ、ぎくりとなったが、さすがサカゲさんは違うなと、愉快に想った。だが、忍の総代として隙を見せる訳には行かない。すっと立ち上がり、超硬化した筋肉を最大に引き絞り、解き放って飛び去った。サカゲには黒檀が消えた様に感じられた。黒煙は収まり始めていたが代わって夜が近づき、結局、光は乏しかった。まるで、霧街の未来の様に。
サカゲには、まだこの戦の先は見えなかったが“烏頭鬼の戦”に一つの区切りがついたことは確かに感じられた。




