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第八話 首切り 1
「首は見つけられたのか?」
身長三メートルを超えるその陰は言った。ここは霧街のどこか。誰も知らない、でも何処にでもある暗がりだ。別の陰が答える。
「いや。ロイが大暴れして以降、行動は慎重だ。見つからない。多分、誰にも見つからないよ。」
「そうか。皆に見つかったら最後だ。その前に手を打ちたいのじゃ。」
「わかってる。」
「では、状況が変わらなければ、次の新月に。」
大きな陰がそう言うと、小さな陰はかさりと音を立てて屋根上に跳び上がった。そのまま、その陰は逡巡する。ゆっくりと振り返って、大きな陰に告げる。
「……もうじき死ぬぞ。コムーネの地下で見た。好きにすれば良い。」
大きな陰は眉をひそめ、そして、小さな陰は飛び去った。夜に浮かぶ屋根波を渡って消えた。




