第七話 幼馴染みを過ぎて。
「クウが帰ってきたの!」
満面の笑みで報告するハクを見て、ロイの胸がきゅうっとなった。霧城の一角、若隈に与えられた部屋に二人はいた。幼馴染みである彼らは良く仕事終わりにお互いの部屋に顔を出していた。今日はロイの部屋だ。日は沈みかけている。ロイはハクの報告とその表情にこころが波立つのを感じた。勿論、嬉しい。当然だ。当然だけど、でも。
「そうか。良かった。今から合いに行こうかな。」
「無理。帰っちゃったんだ。今、医療施設で治療してるんだって。家の様子を確認したかったのと、ロイに渡したいものがあるって。」
ロイは残念に思うのと同時に、安心もした。そして、渡したいたいものって?相反する感情と好奇心が一斉に囁いて、ロイは目眩を覚えた。でも、そうか。クウは彼らしく生きているのだ。ロイは自分が情けなく思えた。でも、そうだ。やっぱり嬉しい。
「泣いてるの?」
ハクはびっくりした顔をロイに近づける。ロイは二つの意味で照れてしまい、顔を彼女から離した。
「なんか力が抜けたよ。安心した。」
そう言ってロイは少し泣いた。ハクはただ、彼を見つめた。自分と同じ涙を流す彼を。でも、ロイの涙はハクとは違う。彼は泪を拭いて顔を上げる瞬間にハクを見つめた。美しい女性が、そこにいた。ロイは懐かしく寂しく思った。
……ああ。幼生のままでいられたら良かったのにな。そしたら全てはもっとシンプルだったのに。