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第五話 愛憎 2
「随分良くなったよ。」
昨日、クウは笑顔でそう言っていた。あさつゆは嬉しくて涙した。一時は本当に死んでしまうかと思うような状態だった。あの日、クウを引き留められなかった自分を呪っていた。でも、今は違う。今はクウを熱心に看病し過ぎた自分を呪っていた。今朝、クウの病室は抜け殻だった。クウはどこかに行ってしまった。きっと家に戻ったんだろう。裏町と霧街の間にある、あのおんぼろ工場に。こんなことではクウは死んでしまう。あさつゆはこの朝、決心した。
「もっとしっかり管理しなくちゃ……。」