濡れて乾いて瞬いて
あぁ…火が暖かい…。
それにしても食後すぐに川で泳ぐことになったから横っ腹が痛い…。
「大丈夫か?普通ちょっと泳いだだけでそんなに腹痛くはならないはずなんだが…どんだけ運動してこなかったんだよ。火の起こし方も知らねぇし、そんな状態でよく旅に出ようとしてたな。」
「うるさいな…僕は箱入り息子だったんですよぉだ。」
「箱入り娘だろ、新しい言葉を作るな。」
「はぁ、お厳しいねぇ。」
「そんなことより、早く服脱げ。」
「えっ!?なんで?……まさか…お前…ホ」
「ホモじゃねぇよ服濡れたままだと永久に冷えたままだから乾かした方がいいだろ。」
「あ~確かに。」
「はよはよ、旅に出るのにこんなグダグダだとダメだろうが。もっとシャキッとしねぇと誰かと戦闘とかになったら秒で制圧されちまうぞ。」
「はぁ~戦闘かぁ…めんどくさいなぁ…。それにしても大靖、いい体してるねぇ。」
「うっるせぇな…さっさと脱げや。」
「へいへい、ところでパンツは?」
「あぁ…パンツは別にいいんじゃねぇか…?ほら…あれだし…。」
「なんだよ、パンツも濡れてるし脱いで乾かした方がいいんじゃねぇの?脱ごうぜ~。」
「いや…その~…ほら、ちょっとさすがにね…恥ずかしいというか…。」
「男同士だし別にいいじゃんか。」
「ん~…でも……。」
「まぁそうだよな、周りから見たら公然わいせつだしな。」
「えっ…あぁ、そうそう、そうだよ。だからさ、誰かに見られたらやばいし止めとこうぜ。」
「うんそうだな……。本当に誰かに見られたらやばいから脱ぎたくないの?」
「いや…あ~、そうだよ、そうそう。うん。」
「俺だからとかじゃなくぅ?」
「うっ…当たり前だろ…。」
「ほんとにぃ?」
「くっ………。」
「ほんとは俺だから見せるのが恥ずかしいとかじゃないのうっ!」
決まりました~ノーアーマーボディーブロー!!!
「くっ…防御力ゼロの時に……。ぐふっ…。」
「はぁはぁ…。セクハラ野郎め…はぁはぁ…。」
「ふぅいたた…。はぁ、僕も言い過ぎたよ。ごめんよ。」
「ほんとに…別にそういう事じゃないから…お前が好きだからとかそういうわけじゃねぇし………。」
ん~なによなによ?なんかしおらしいじゃないの。
「あぁ?なんだ陸斗てめぇ…。」
「あぁごめんごめん、ごめんって。」
「別に仲間としては好きだが、それ以上じゃねぇし。」
「お、おう。そうか。」
「信じてねぇな。殴るぞ。」
「まてまて、またそうやってすぐ手を出そうとする~。落ち着きな。とりあえず深呼吸深呼吸。」
「はぁ?落ち着いてるし。」
「落ち着いてないからこうなってるんだろうが。一旦深呼吸しなって。」
「だから落ち着いてるって言ってんだろうが!」
「ほらほらストップ。あぁところでなんで転生して川岸に行ったときは服脱いで乾かさなかったんだ?」
「……え?」
「ほら、川に落ちて転生して、服もびしょ濡れだったでしょ?なのになんで服を脱いで乾かさなかったんだ?」
「………そういえば…。なんでだ?」
「さぁ?」
「というか…服濡れてたっけ?」
「たしかお前が服がびしょ濡れで寒いし火に当たろうって言ってそれで火を…。でも…。あれ、濡れてたっけ?」
「たしかに俺が言ったような記憶もあるんだが…。濡れてなかったような気もするんだよな…どうだったかな…。」
「……もう一回転生してみる?」
「……そうする?」
「そうしようか、んじゃ行くぞ~」
「待て待て、服着てからにし…」
「僕らが火を焚いた川岸のあの場所へ行きたい!」
「…ようって言いたかったんだがなぁ……。」
「着いた~!ほんとに熱望したら着いちゃったぁ!」
「はぁ、まあこれでできなかった後片づけも出来るしいいか。」
「後片付けすんの!?」
「当たり前だろ。俺たちが作ったんだ、そのままにしてるわけにもいかねぇだろ。」
「おぉ、ごりっぱな…というか…お前いつ服着たんだ?」
「は?あれ…そういえば陸斗もだぞ。」
「あれほんとだ、なんでだ?」
「ん~、お前の能力の深層はよく分からんなぁ。もっとちゃんと見た方がよさそうだな。」
「パンツの中も?」
「………。コロス…。」
やばい、逃げよう。
「マテ陸斗テメェオラ!」
「ははは、追いつけるものなら追いついてみるんだな……うっ…横っ腹がいてぇ………。」
「ツカマエタゾ。」
「ごめんごめんちょっと待って、休憩させて。死ぬ。今腹パンされたら死ぬから。」
「モンドウ…ムヨウ……。」
「ひぇぇ、お助けをぉ!」
「っと危ないな、なんだ?矢?……陸斗起きろ、まずいぞ。」
「え?なにが?」
「囲まれてる、原住民だな。6人だ。武装は5人が弓矢、1人が…なんかあの…くの字のやつ。」
「あぁ、ブーメラン?」
「あぁ、それそれ。それにしても朝食材集めてた時は気配すら無かったのに何で突然…。とりあえず今すぐ逃げた方がよさそうだな。」
「逃げるってどこに?」
「転生しろ。いいから早く!」
「あっ、そうか!元の世界に戻れ!」
「………どうだ?」
「あぁ、元の世界に帰ってきたな。」
「ふぅ助かった。というかよく矢止められたな。凄いよ。」
「あぁ、周りに注意を向けるようにしてるのよ。普段もそうだが怒ってるときとかは特に周りが見えなくなっちますからな。まぁ結果的にそのおかげで無意識下にも意識を向けてる判定になって死角からの攻撃とかも固有スキルで分かっちまうってことよ。」
「“意識してる物の状況が分かる”からって無意識下の動きは分からないわけじゃねぇんだな。」
「とらえ方次第ってもんなのかな?俺にゃよく分かんねぇよ固有スキルって代物は。なんたって神のギフトとかいうやつなんだろ?神とかいまいちよく分かんねぇしなぁ。それに固有スキルに関しては深く意識しないと完全に分からないというか、他の事象よりも分かりにくいんだよな。情報が隠されてるというか、そんな感じ。」
「あなたは神を信じますか?」
「勧誘やめろ。」
「今回の転生で服が現れたことについて何かご意見は?」
「そうだな…そうですね、今回の件につきましては、こちらでも能力の解析を進め、いち早く解決に努めたいと思います。」
「よろしくお願いします。」
「任された。それはそうと、ちょっと提案があるんだがいいか?」
「おう、どうしたの?」
「仲間増やさねぇか?」
「えっ!?大靖の浮気者!」
「うぇい殴るぞテメェ。」
「めんごめんご。それで、仲間の当てはあるの?」
「数人いるな、前に学校で能力をちょろっと解析してたんだが、うちのクラスのやつが持ってる固有スキル、なかなかに曲者ぞろいだったぞ。」
「曲者って…未知の固有スキルってこと?」
「あぁ、そうだな。少なくとも固有スキル大全には載ってなかったな。」
「固有…スキル……大全………?」
「まぁ、お前は知らねぇだろうな。学校から配布された教科書の1つだってことも忘れてただろ。本棚で埃かぶってるのか。」
「そうそう、よく分かったな。」
「あらかた予想はつく。」
「ひぇ。化け物め!」
「俺は妖の類いかよ。」
「妖の類いって、そこは化け物でいいだろ…。」
「あぁ?俺の言い回しになにか不満でも?」
「いや、別にそんなわけじゃ…。」
「まぁいい、とりあえず、仲間候補を訪ねに行こうや。」
「そうしようか。レッツジーオー!」
「レッツゴーだよ。」
「え?!あれゴーって読むの???」
「それ以外にねぇだろ。というかアルファベットそのまま読みな英単語なんてあるわけないだろ!」