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全ての始まりは終わりに通ず

今日は僕にとって今後の人生が決まる運命の日だ。

今日僕は12歳になる。

僕らの住む世界では12歳になると神に『固有スキル』というものを授けられるのだ。

この時スキルは完全に神の気まぐれで与えられるので、かぶることもあれば今までこの世界のどこにも存在しなかった未知のスキルを与えられる事もある。

僕が住んでいる国、オルセデス大帝国はスキル至上主義であり、固有スキルが有用なスキルか無能なスキルかによって人権が決まるといってもいい。

というより無能なスキルだと判断された場合には即刻処刑されるのだ。

かぶった固有スキルなら別にいい、『アックスマスター』とか『鑑定』とか『フレイムマジシャン』とか、現在判明しているスキルなら基本困ることはない。

まあ社会に出ても地位が固有スキルで決まっちゃうことが多いけど。

でも未知の固有スキルの場合そのスキルが有用かどうかわからないため、スキルを吟味する必要が出てくるのだ、そしてこの時ステータスがかなり重要になってくる。

ステータスというのは成長可能な、まあ言うところのHPとかMPとかだ。

ステータスが低いとかなり不利だ、なぜか固有スキルの判定の結果も悪くなる傾向にあるらしい。

スキル至上主義とか言っておきながら、実際は今後優秀な人間になる見込みがあるかどうかなのだろう。

まあこんなこと実際に口に出したらそれこそ殺されてしまうだろうな。

「次の子、どうぞ中へ。」

僕の番が来たようだ、緊張する。

固有スキルとステータスの判定には水晶に手をかざすシステムらしい。

なんで水晶なんだろう、なんで手をかざすだけで…?

まあ疑問に思っていても仕方ないか、ここら辺はなにか仕組みがあるのだろう、システムがどうこうとか設定がどうこうとか言われてもそういう系は苦手だ。

なんでこんな疑問に思う事が多いのに説明を受けのがめんどくさくなるのだろうか…損な性格に産まれたなぁ。

「君の名前と生年月日を教えてください。」

「柊陸斗、2004年2月13日生まれです。」

判定員さんの手元には書類があり、僕の名前と生年月日、住所諸々が書かれている…

「はい、間違いありませんね。ごめんね、一応本人か確認しないといけないんですよ。」

書類を見つめていたのを判定員さんに見られたようだ、別に謝らなくても大丈夫ですよ。

「こちらへどうぞ。」

僕は判定員さんに案内されて水晶のもとへ案内された、正式名称は神の水晶…とかだったかな、正式名称を疑問に思っていたけど授業で説明されたときには説明を聞くのがめんどくさくなって寝てしまっていたから覚えてないや、合ってますように。

あ、そういえば僕の世界では12歳まで学校でこの世界の事を学んで、12歳からは自由に夢を追いかける事になってるんだけど、12歳までの学習でいままで知識をどれほど吸収したかとかを確認されたことはなかったな…なんでだろ。

まあのんびりできて僕的にはいいんだけどね。

そういえばこの水晶は固有スキルとステータス以外にも魔法適性とか職業適性とかもわかるんだっけか…

そんなことをうだうだ思いながら僕は水晶に手をかざした。

すると水晶に文字が浮かび上がった。

「ステータス:HP,200 MP,150 パワー,75 身体能力,150 スタミナ,100 知能,150 固有スキル:『転生』 魔法適性:炎系魔法、土系魔法etc. 職業適性:農民、漁師、狩人etc.」

「「固有スキル『転生』?」」

判定員さんハモったってことは判定員さんも知らない、つまり未知の固有スキルって事だろう、最悪だ…めんどくさいことになる…。

「ん~『転生』か……僕は知らない固有スキルだな…一応判断長に聞いてみるね。…………もしもし、判断省判定局判定員長高橋悠斗です。判断長様、少々お時間いただいても大丈夫でしょうか……実は固有スキルの件についてなんですが…………。」

判定員さんは目を閉じて判断長とかいう人と会話しだした、おそらく判定員さんの上司的存在だろう。

通話媒体も無く遠くにいるであろう人と会話できるってことは、これが判定員さんの固有スキルなのだろう、たしか『テレパシー』とかいう固有スキルがあったような記憶がある。

「はい、ありがとうございました、了解です、お手数おかけします……。ごめんねほったらかしちゃって…あれ?…あぁそっちか。ごめんね、突然だけど判断長っていう判断省の最高権威がこっちに来てくれることになったから親御さん呼んでくれるかな?説明とかがあるんだ。」

「はい、分かりました。」

幸い親と一緒にここ出張判定場にきてるから親を呼びに家に戻ることもしなくていい。

まあ親を呼びに家にもどるといっても今年12歳になったのはヒョゴ村で僕だけだったから出張判定場は家の前まで来てくれたんだけどね、ありがたい限りです。

僕はお母さんとお父さんを呼んで説明を受けた。

僕の固有スキルが判断省の固有スキルデータベースの中に存在しない未知の固有スキルだったこと、その件で判断長の最高権威である判断長がこの村に来てくださるということ、固有スキルの内容次第では僕は価値がないと判断され国に殺されてしまうということ、その他いろいろと手続きなどの話もあった…まあうろ覚えだけど。

そうこうしているうちに判断長が到着したらしい、王都にある判断省から郊外のこのヒョゴ村までこんな早く到着できるなんて王都の移動手段は発達してるなぁ。

「どうもこんにちは、判断省の総括、判断長のジョン・アンダーウッドと申します。柊陸斗くんですね、よろしくお願いします。」

判断長、もといアンダーウッド判断長は部下2名を引き連れてやってきたようだ、おそらく直属の部下とかそんなんだろう、でも見たところ乗り物みたいなものは見当たらない…もしかして固有スキルでここまできたのかな?

「早速ですが君の固有スキルを判断させてもらえるかな?さあ山下君、よろしく。」

山下と呼ばれた部下の一人が僕に歩み寄ってきた。

「手をお借りします。」

山下さんに手を取られた、この人の固有スキルは『認知』だろう、“触れることで相手のステータスや固有スキル、覚えている魔法、職業、弱点などの内容を詳しく知ることができる”とかだったかな…なんで『認知』の固有スキルの内容を詳しく知っているんだろう、珍しく授業内容をちゃんと聞いていた………いや、いやいやいや『認知』なんて固有スキルは知らない、聞いたこともない、そしてこれは…

「山下孝則 32歳 職業:判断長補佐 ステータス:HP,800 MP,750 パワー,700 身体能力,600 スタミナ,700 知能:200 固有スキル:『認知』“触れる事で相手のステータスや固有スキル、覚えてる魔法、職業、弱点などの内容を詳しく知ることができ、自分が認知したことをほかの相手に伝える事もできる。” 魔法:木魔法・風属性(強)・酸属性(中)、炎魔法・暑属性(強).」 

なんで…なんで山下さんのステータスが?自分のステータスとか覚えてる魔法は自分しか把握できないはずなのに…はじめこの人の固有スキルは『鑑定』だと思ってたけど、この固有スキルは『鑑定』とは違う、『鑑定』はたしか“触れた相手の固有スキルとステータスを把握できる”とかだったはずだ、結構地味な固有スキルだけど鑑定士や判定員の仕事に就くには最適な能力だから地味に重宝されている優遇固有スキルだった、でも山下さんの固有スキル『認知』は『鑑定』の上位互換的固有スキルだ、しかも名前を知らないという事は未知のスキルだった可能性が高い。

「ありがとう、君の固有スキルの事はよく分かったよ。これから判断長に報告するから待っててね。判断長、彼のスキルの内容とステータスです。」

「ふむありがとうございます。」

判断長と山下さんが手を取り合っている、“自分が認知したことを相手に伝える事ができる”だったっけ、さすが判断長の直属の部下なだけはあるな、すごい固有スキルだ。

「ん~これは…ふむふむ……使えないな。」

「えっ……」

「親御さんには申し訳ないですが、田中君、殺っちゃいなさい。柊君なにか言い残したことはあるかな?」

「えっ…えっ、あのっ…」

「よろしいのですね、ではさようなら。」

「待っ、ちょっと待ってください。」

「もう遅いです、さようなら。」

「待っ…」

僕と判断長の会話を遮るように判断長のもう一人の直属の部下、田中さんが間に入ってきた。

死ぬ…そう直感した……無意識に目をつぶっていたのだろう、目を開けたら僕をかばうようにしてお父さんが僕の目の前に立っていた。

そして次に血が地面に滴っているのが見えた。

まさか、お父さんが血を出すなんてことはあり得ない、お父さんの固有スキルは『硬化』だ、皮膚を硬化することで体中どこに銃撃や斬撃を受けても効かない、僕が生涯生きてきた中でお父さんが血を流しているところなんて見たこともない、硬化したお父さんを傷つける事なんて絶対できない、しかも『硬化』は任意でも発動できるけど無意識下からの攻撃でも自動で発動し攻撃を受ける場所を局所的に硬化する、どんだけ早い攻撃でも正確に攻撃がヒットする場所を硬化する、しかも局所的な硬化は全身硬化よりも格段に強度が上がる、王国の騎士団にも多くの『硬化』能力者がいるはずだ、防御兵団として全王国で採用されている、それほどの防御能力を誇る固有スキル『硬化』だ、硬化した皮膚を突破して肉体に傷をつけるなんてそんなこと…。

しかしそんな考えもむなしく消えた、いや消された。

お父さんの背中から血にまみれた腕が僕に向かって伸びていたのだ、あと数センチで僕にもその届いていた…お父さんを貫通した田中さんの腕が…お父さんの硬化したお腹と背中の皮膚を二枚突き破って…伸びていたのだ。

「逃げろ…」

お父さんが言った。

「逃げて!」

お母さんが叫び声をあげた。

僕にはその言葉が聞こえていなかった…僕の体が宙に浮き、後方に投げ飛ばされた。

お父さんに刺さっていた手が抜かれ、お父さんが地面に倒れたのが見えた。

そして僕は我に返り、着地した後必死に走った。

走って走って走りまくった。

本気で走った。

我を忘れて走った。

必死に走った。

そして僕は転生した。


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