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第一章 part6 22区

第一章 part6 22区


「こっここが!第22区「ジェスター」ギルドの本拠地か?!」


ガイヤ率いる「無能」ギルドは、朝早く拠点をテレサを置いて出立し第22区を目指した。

此所バジェスト帝国第22区の北部ジェスター・バイオ。

石造りの建物が軒を連ねて、時間帯が昼間という事があってか人通りが多い。

キラキラと輝くいかにも高く値段がはりそうな宝石をはめた指輪に艶かしい紅く塗られた唇、チカチカと光沢が眩いドレスを着こなした女性達やピシッとスーツを身に纏ったチョビヒゲが目立つダンディな男性が多い。

そう此所22区は、全24区の中でも上位の経済力を持っており、富裕層の帝国民が此所に集まる。24区より高層の建物が多く、経済の格差を感じる。

そして何よりも、今俺達は目の前にある建物に唖然としていた。

それもそのはず、ケイ達の瞳に映るのはまさしく宮殿。

此所に来る道中で時折見かけた高層な建物よりも遥かに高かった。

お伽噺話に登場するような宮殿に、正面にある大きな門の奥にあるのは正方形の庭に円形の噴水があるのが見えた。

制服の上から黒ずくめのマントで身を包み周りの人間に額が見えないようにフードを被った俺達は、今現在「ジェスター」ギルドの宮殿に目を釘付けにされていた。正直、額に星を偽装する事は可能だ。多くの「無能」は、額に偽りの「能力者」の烙印をメイクする事によって、「無能」では住まう事が許されていない区でも生活を送る事が可能になる。しかし、どれもこれもバレなければの話だ。もし、「無能」を偽って生活していたとなれば、何が起こるかわかったものではないからだ。

ギルドメンバー全員が宮殿に目を奪われていると、ガイヤが口を開く。


「なっなっ何だ此所本当にギルドなのか?!」


ガイヤは、ギルドメンバー全員が見て思っただろう言葉を口にした。宮殿の外装は金のように輝いていて大富豪の貴族が住み着いているんじゃないかと思わせるほどの威容だった。

ガイヤの言葉につられカイトも目の前の光景に圧倒される。


「まさにお城だな・・・。」


俺達が目の前の宮殿に圧倒される中、サレーネは一際目をキラキラと輝かせて両親におねだりする子供のようにガイヤにすがる。


「わっ私こんなところで、暮らしたい!ねぇ~リーダーお願い~~」


「無茶言うな、金もろくに持ってない俺達じゃあ無理だっ。諦めろ。」


サレーネはガイヤに一刀両断され、幼い子供のように駄々をこねる。


「えぇ~~~やだやだやだ~~」


サレーネが駄々をこねていると、ゆっくりと正門が開かれる。開いた先には、スーツを着こなした召使いらしき男が頭を下げ左膝と右手の握り拳を石畳の地につけ、待っていた。


「ようこそ、おいでいらっしゃいました。ギルドメンバーがお待ちしております。どうぞ此方へ、ご案内いたします。」


「あっはい、お願いします。」


ガイヤは少し動揺しながらも、返事をする。

フードで顔がよく見えないはずなのだが、よく気がついたものだとガイヤは少し戦慄を覚えた。

告げ終えた召使いらしき男は、誘導するように宮殿に向かって歩き始めた。召使いの後を追うようにガイヤを先頭に俺達も追随する。

正方形の前庭を通り過ぎ、宮殿の正面玄関とされる大扉が目の前にあった。

大扉のあまりの大きさに俺達一同は驚愕していると、召使いらしき男が大扉をノックしゆっくりと大扉が開かれる。

フードを外し中へ入ると外観に負けないくらいの内装で、高級感漂う品のある壺や絵画が並んでいるのがそこかしこで目についた。

宮殿は最上階まで続く吹き抜け構造で、天井からキラキラと輝くシャンデリアが吊るされてあった。

初めて見る独特の雰囲気にまたもや、俺達は圧倒される。

俺達は大きな玄関ホールを過ぎ、さらに前に進むとあちらこちらに、銀色の鎧を纏った兵士らしき人がいるのが見えた。


「しっかし広い玄関だったな・・・しかも俺達が今踏んでるこのレッドカーペットや壺とかすげぇ高く値がはりそうだな・・・」


カイトが周りの豪華な光景を見て、感想が溢れる。確かに、今踏みつけているレッドカーペットは高級感溢れている。壺なんか割った日には、一体いくらの弁償金が出るのだろうか考えただけでも、鳥肌が立つ。


「わぁ~~~~キレイ~~~♪」


サレーネの瞳は茶色のはずなのに、キラキラと光を帯びるように輝いていた。

今までに見なかった光景に、ケイは冗談混じりに言う。


「いや~お嬢様が住んでそうな場所だなー。アキみたいな。」


アキはケイの言葉を聞き逃さず、怪訝そうな目をケイに向ける。


「ケイあんた何か言った?お嬢様がどうとか言ってたわよね?何あんた私がお嬢様だとか言いたいわけ?」


アキの冷えきった目に戦慄し、肩を震わせる。ケイは慌てて否定する。


「ききき聞き間違いじゃないか?!俺がそんな事いうわけないだろ?!・・・ってっていうかいつからケイって呼び捨てになったんだよ・・・。」


ケイは頬を少し赤らめながら、通常より小さめな声量で呼び捨てにした理由をアキに聞く。

それを聞いたアキは、先ほど自分がケイに対して呼び捨てにしたことを思い出し明らかに照れている様子で顔が赤面していた。


「はっはぁ?!べべ別に良いじゃない!あんただって私の許可もなしにアキって呼び捨てにしてるでしょ?!そのお返しよ!変な風に勘違いしないでよね?!」


っとアキは必死に言い訳をし、そっぽを向いてしまう。その様子を見ていたケイがため息を一つつく。


「んだよ素直じゃねーなぁ。ていうか、俺達はどこに連れて行かれるんだ?」


「知らないわよ。黙ってケッ・・・あんたは足だけを動かしとけば良いのよ。!」


ん?今ケイって言いかけたよな?っと思い少し照れるケイ。

玄関ホールから200mくらい離れた場所まで歩いたのち、両手式の扉の前まで来た。召使いらしき男がその扉を開けるとその先に広がっていたのは、正方形の大きな室内に円形の大きな戦闘用リングを中心に四方には観客席用のギャラリーがある。

そしてそのリングの上に立って此方に視線を向ける集団がいた。

「ジェスター」ギルド特有の黄色が目立つ制服を身に纏った集団が横一列に隊列のように並んでいる。隊列の二歩手前に一際目立つ三人組が見える。ケイは隊列を見て、気になった事を口にする。


「もしかして、あいつらが?」


ケイの疑問にアリスがリング上にいる集団から目を逸らさず鋭く冷たい視線を向けながら、強ばった声で返答する。


「そう、あそこにいるのが「ジェスター」ギルドメンバー一行よ。」


アリスは、そう言い終えると両手を思い切り握りしめる。ケイはアリスを横目に、「ジェスター」ギルドとのただならぬ因縁があるのだと感じた。

すると、一際目立っていた三人組の「無能」ギルド側から見て左側、黒い紫みの青髪に青碧の瞳

のエディがさらに一歩前に出る。そして、たちまち笑顔を浮かべ嫌味を含んだ口調で喋り始める。


「まったく・・・「無能」ギルドって呼ばれる由縁が今日よくわかったよ。おふざけで出し続けた練習試合申請を受けるとは・・・ククク」


クククっと俺達を見てあざ笑うように不敵な笑みを浮かべる。明らかな嫌味に俺達は、グッと手を握りしめ歯ぎしりする。俺達は怒りを含んだ冷たい目線をエディに向けていると、右側にいた承和色の髪にすこしくすんだ黄苺の眼のケディがエディと同じく一歩前に出る。そして、エディに似た不敵な笑みを浮かべる。


「君たちは、能力だけでなく頭も「無能」だったのかっ!ハッハハハーーー!!」


ケディの嫌味を含んだ笑い声は室内で響き渡る。

そして聞き慣れた蔑称が耳に届く。その言葉は胸の奥底まで届き突き刺さった。

無能。

世の人間として生まれながらその世から差別の対象になっている。「能力者」を持っていない人間の蔑称ーわかってはいるが、やはり「無能」に言われるのと「能力者」に言われるのでは、心に来るものが違う。エディに言われズキッと何かが突き刺さるように痛む。

すると、中心にいた紅絹色の髪に紅い瞳のラディが先ほどの二人と同様に一歩前に出る。

よく見ると三人組の顔が髪や瞳は違うけれどほぼ一緒で、血の繋がった兄弟と思えるほどに。

そしてラディは、たちまち口を右側に吊り上げる。


「さぁて7年前みたいに吠えずらかかせてやるよ。」


7年前という言葉が気になったケイは、誰に聞くのでもなく皆に聞くように問いかける。


「な7年前?」


その問いにアリスが眉を眉間にひそめ肩を震わせながら呟いた。


「22区は私達が最後に出場した英剣舞祭予選の初戦相手だったの・・・。そして私達は、負けた・・・あの三兄弟に。」

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